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□ハートの片割れ
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いつも明るくて聡明なヨハン・アンデルセンは、月曜のこの日、珍しく悩んでいた。
ヨハンが先程から見つめているのは、土曜日の朝7時半から放送されている、子供たちに大人気のアニメ「銀河戦隊 ネオスペーシアン」のキャラクターが描かれている1枚の手紙。
かっこよく右手を上げていたり、腕を組んでいるキャラクターとは裏腹に、その手紙の文面は絵とはかけ離れたものだった。


『3−A ヨハン・アンデルセン君へ
放課後、2階の第2理科室まで来てくれませんか?

3−Eの者より』


たったこれだけ。
ヨハンの今までの経験と文面から読み取るに、多分告白されるのだろう。
しかし、ヨハンは女の子に戦隊モノのキャラクターが描いてある手紙で呼び出されたことはない。
ましてや、字が女の子の字じゃない。
形が悪くて、まるで………男…?
…いや、字が汚い女の子だっているだろう。
戦隊モノが好きな女の子だっているだろう。
ヨハンは何度も自分を納得させようとしたが、あまりにも自分の「女子の書く手紙像」と違ったため、結局、朝に下駄箱で手紙を発見した瞬間から、放課後の今まで悩むことになった。

 * * *

そして、放課後。

第2理科室は、放課後に生徒の出入りが全く無いことをヨハンは知っていた。
教室の中は余った机や教材などが沢山置いてあり、「第2理科室」という名の物置になっているからだ。
ヨハンは自分の教室から第2理科室までの道のりで3−Eの生徒を思い出そうとしていた。
確か、元々カノが今3−Eだった気が…する。
学年一可愛い女子も3−Eだ。
そういえば、友達が「3−Eは可愛い女子が多い」と言っていたことも思い出した。
俄然、速歩きになる。

第2理科室のドアの前に立ち、少し緊張しながら勢いよくドアを開いた。
すると、そこにいたのは――――…


「あ、あの、こんにちは」

「えっ、あ、こんにちは…?」


男だった。
ズボンをはいてる。

もしかして、俺が勝手に告白だと勘違いしただけで、実は頼みごとだったのか?
そういえば定期試験が2週間後にあるし、早めに「ノート貸してくれ」とか?
でもクラスが違うやつに借りるか?
色々な考えがヨハンの脳裏をよぎったがヨハンの考えは間違っていなかった。

「あの…俺、3−Eの遊城十代です!俺と……俺とつつっ、つつつつ付き合って下さい!!!」

ヨハンの頭は一瞬で真っ白になった。
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