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□Admiration…?
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「ここが、皇ヶ咲学園かぁ…」

十代は今、丘の上に大きくそびえ立つ高校の門の前にいた。
幼い頃からずっと憧れていた女子校。
偏差値も倍率も高く、中学時代の最後の1年は勉強漬けだったが、そのかいあって、晴れて十代は春からこの皇ヶ咲学園に入学することが出来たのだ。

ここまでして十代がこの学園に拘るには、理由があった。

『うっく…よはん…、行っちゃやだあ…っ』

『しょうがないだろ?十代…。』

泣きじゃくる幼い十代の頭を、ヨハンが優しく撫でる。

幼い頃、十代の家の近所にヨハン・アンデルセンという名前の、2つ歳上のハーフ女の子が住んでいた。
ヨハンの母親はドイツ人で、日本人であるヨハンの父親は転勤が多く、ヨハンは小さい頃からいくつもの町を転々としてきて、十代が住む町は4つ目の町だと言っていた。

ヨハンが町に住み始めて間もない頃、散歩がてら町内を散策していたら帰り道が分からなくなってしまい、困り果てていたところをたまたま通りかかった十代が助けてくれたのがきっかけで、二人は仲良くなった。
ヨハンも十代も兄弟がいなかったので、2歳年の離れたヨハンを十代はまるで姉のように慕い、ヨハンは十代を妹のように可愛がった。

春はヨハンとお花見に行き、夏はプールに行き、冬は雪遊びをして過ごした。
しかし、そんな楽しい月日もヨハンの父親の転勤によって終わりを告げる。

十代は文字通り泣きわめいてヨハンを引き留めようとしたが、その時ヨハンは12歳、両親についていくしかなかったのだ。

涙の別れから5年、ヨハンが十代の住む町に戻ってきて、皇ヶ咲学園に通っていることを十代は偶然知り、居ても立ってもいられず、十代は受験しようと考えていた学校を止め、皇ヶ咲学園を受験することを決めた。
そして、春からこの学園に通えることになった。

入学式の日、校長先生の長たらしい話で早くも船を漕ぎ出した十代だが、司会者の声で目が覚めた。

『続きましては、生徒会長、ヨハン・アンデルセンさんの挨拶―――』

「えっ!?」

慌てて壇上を見ると、丁度ヨハンが壇上に上がったところだ。
何も変わってない。
翡翠色の髪も、エメラルドグリーンの目も…
でも体つきは十代とは大分違う。
胸もお尻もあるし、ウエストだってくびれてる。
十代は自分のぺたんこな胸を見て、人知れず溜め息をついた。
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