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□An opportunity ver.child
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ヨハンの家庭は金持ちで、両親共に研究者だ。
両親の頭のよさをそのまま受け継いで、小さい頃から同い年の子と比べると頭のよかったヨハンは、家柄に恥じぬよう、受験をしなければ入れない有名な私立の小学校に入学した。
「なぁ、今日の放課後、皆で公園で野球しないか?」
ヨハンに誘われた友人達はすまなそうな顔をする。
「あー…ごめん、今日は塾なんだ…」
「おれも、塾…。また今度な!」
「そっか…」
同じ台詞を何度も聞いた。
少しくらい勉強をしなくても余裕を持って授業について行けるヨハン。毎日の勉強と塾通いでようやく授業に追い付けるヨハンの友達。
頭ではしょうがないとわかっていても、ヨハンは遊び相手が欲しかった。
学校が終わると、自室のベッドの上で一人で本を読んだり、音楽を聴いたりしている息子を見て、両親もさすがに不憫だと思ったのか、ある日、ヨハンに提案する。
「ヨハン、友達と遊べないのはつらいだろう。そこで、好きなときに好きなだけ遊べる友達を呼ぼうと思う。その子は孤児で、児童施設から呼んだからここに一緒に住むことになるが…どうだろう?」
「本当?今すぐ呼んできて!」
嬉しさのあまり跳び跳ねるヨハンを、両親は満足そうに見た。
「じゃあ、あさってから早速うちに来てもらおう。ヨハンと同い年で、きっと話も合うだろう」
「すごく嬉しい!ありがとう、お父さん、お母さん…」
素直に感謝すると、ヨハンの母はしゃがみ、ヨハンと同じ高さの目線になる。
「明日来る子とあなたは、きっといい友達になる。友達を大事にね。」
友達を、大事に…心の中で何度も唱え、体に染み込ませた。それが世界一大切なことのように。