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□この気持ちの名前は、・・・
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休み時間、堅苦しい授業から解放された生徒が、友達とのお喋りに花を咲かせているとき、十代がヨハンに話しかけた。

「なぁヨハン、明日駅の近くに出来たカードショップ行かねー?」

「あ、ごめん十代…、明日はちょっと…」

後頭部を掻き、凄くすまなさそうな顔をしながらヨハンは言った。

「あ…、そっ…か、わかった」

精一杯の作り笑顔でヨハンに笑いかけ、その足で教室を出て、廊下を出たところでずるずると床に崩れ落ちた。

…最近いつもこうだ。些細なことでもつらくてたまらない。
明日ヨハンは他の友達と遊ぶのだろうか?それとも、女?
そこまで考えて、十代は頭を抱えた。
友達に対してこんなことを考えるのはおかしいと分かっていても、鼻の奥がツンと痛んで、胸が苦しくてしょうがない。
翔や万丈目にはこんな風にはらないのに、ヨハンにだけ、十代はとても傷つきやすくなる。
つまらない独占欲を見せるのはみっともないと十代は思っているので我慢しているが、夜、耐えきれなくなって頬を濡らしたときもあった。

何故こんな気持ちになってしまうのか、十代にはまだ分からなかった。

次の日、十代はヨハンを見かけても、声をかける勇気など無く、一日中ヨハンを避けていた。
しかし、ヨハンのことが気になってしまい、授業中や休み時間にチラチラと視線をやると、ヨハンは他の友達と楽しそうに喋っている。
それを見て、十代の中に怒りやら嫉妬やら悲しみやらがドッと押し寄せ、それを振り払うかのように十代はぎゅっと目をつむった。

その日の放課後、十代が帰る準備をしていると、ヨハンがあからさまに怒った顔で十代のところに来て、「ちょっといいか」とだけ言った。
十代が返事をする前にヨハンは十代の手を引き、早足で歩き出した。
十代はそれまで胸にモヤモヤとしたものを感じていたが、ヨハンにしっかりと手を握られた恥ずかしさと緊張でそんなものは吹き飛んでしまっていた。
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