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□やっと。
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ヨハンの部屋の大きなベッドで、二人は身を寄せ合い、同じ布団に向かい合ってくるまっていた。
「別に、無理して俺と一緒にいなくていい。」
「だーかーら、俺はヨハンといたいの!」
さっきから、同じような会話をずっと続けていた。ヨハンがこんな風にいじけている理由は、いつもヨハンと一緒にいる十代が、今日はたまたま翔といることが多かったからだ。
ヨハンは、「十代はもう俺と一緒にいたくないんだ…!」と、盛大に勘違いをしてしまい、 ヨハンの部屋に十代が訪ねてきてもずっとこの調子だ。
十代が子供をあやすようにヨハンの背中をさすっても、ヨハンは十代の胸に顔を埋めたまま上げようとしない。
「俺はヨハンが好きだから。な?顔上げろって」
十代がヨハンの頬に手を当てて無理矢理上を向かせると、思いの外ヨハンと顔が近いことに気付いた。ヨハンも驚いて目を丸くしている。するとヨハンは、ふと目を細め、俯いて、切なそうに喋り始めた。
「…俺がどんなに望んでも、努力しても、本当に欲しいものは絶対に手に入らない…」
十代はヨハンの言葉を黙って聞いて、ふっと笑った。
「ヨハンの望むものは、多分もう手に入れてる。そんな気がするぜ」
根拠はないが、十代は確信していた。
「ヨハンは何が欲しいんだ?」
ヨハンの目を見て優しく聞くと、ヨハンは少しの間目を閉じて、小さな声で
「十代の心だ」と言った。
十代は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに微笑んだ。
「ほら、もう手に入れてる。」
(この後、ヨハンに一晩中…)