旧拍手

□謎の虫
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ヨハン+十代+翔


購買に行ってドローパンを購入した翔が教室に戻ると、十代がヨハンに向かって強い口調で何かを言っていた。
翔の位置から二人とは距離があるために内容は聞こえないが珍しくヨハンが押されていて、十代が喋る度におろおろしている。
心配半分、好奇心半分で二人に近付くと、聞こえてきた話の内容は不思議なものだった。
「だからー、ヨハンの部屋には変な虫がいるから駆除した方がいいって!」
と十代。
「蚊だって、蚊。痒くない蚊もいるらしいぜ…」
とヨハン。
「……どうしたんすか?」
少し聞いただけでは全く意味のわからない会話に翔が思わず口を挟むと、それに気付いた十代が「翔!!ちょっと見てくれよこれ!」といいながら自身の着る黒いインナーの首もとの布を指で引っ張って、鎖骨の辺りを翔に見せた。
「ヨハンの部屋には変な虫がいるみたいでさ、俺が泊まる度にここに赤いのが増えるんだ!俺は4カ所も刺されてて、ヨハンは蚊だって言うけど痒くならねぇ蚊なんて聞いたことねーし、絶対変な虫だって!!こんだけ刺されるってことは、もうウジャウジャといるんだ…!」
小さな赤い痕が4カ所ついた鎖骨を晒しながら自分の説を熱く語る十代とは裏腹に、翔はこれ以上無いくらいに冷徹な目をしてヨハンを見ていた。
十代が赤い痕を晒したのと同時に俯いてしまったので、ヨハンの顔は見えなかったが。
十代はそんな二人の様子に気付いていない。
「きっと最初は1、2匹だったんだぜ。でもそいつらが子供を生んでだんだん数が増え「アニキ、僕その虫の正体知ってるよ」ええっマジかよ!?教えてくれ!」
翔の言葉に十代は興奮を隠しきれず、少年のようにキラキラとした純粋な目をして言葉の先を促すように翔を見た。
「その虫は海外から来た虫で、青緑色っぽいと思うよ。フリルをよく着ていて、いつもアニキの周りをブンブン飛んでる」
「青緑…?フリル…?なんだよそれ、変な虫だなあ…図鑑で調べてみないと」
放課後図書室行くかぁ、と明るく言う十代とは裏腹に、翔は相変わらずジト目でヨハンを見ていて、ヨハンも俯くばかりだった。



End

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