旧拍手

□魔法カード『グミ』
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俺のくちのなかの柔らかな粘膜を、ヨハンの舌が優しく撫でる。

俺も負けじとヨハンみたいにしようとするけど、体は熱いし頭はぼうっとするしで全然うまくできない。

なんでだよ、何でヨハンはこんなに巧いんだ?

俺は口一杯に人工的なイチゴの味が広がっているのを感じながら、キスの合間に無意識に甘ったるい溜め息を漏らした。


―――――――――――――


「十代、キスの練習しようか」

ヨハンの部屋で、ヨハンにそう言われたのはほんの少し前。
何だかデュエルもする気になれなくてベッドに寝転がってぼんやりとテレビを観ていたら、突然言われた。
はぁ?と間抜けな声を上げてヨハンを見たら、ヨハンは悪戯っぽい笑みを浮かべて俺を見ていた。

「男同士ならカウントされないし、女の子と付き合ったときに失敗したくないだろ?俺、絶対上達するやり方知ってるんだ。」

ヨハンの巧みな誘い文句に、俺はうーん、と唸った。
巧くて損はしないだろうし、何しろ「絶対上達する」というヨハンのお墨付きだ。

あと……「キス」がどういうものかを知りたいという強い欲求に、俺は逆らえなかった。










お互いベッドの上に向かい合って座って視線を交わしながら、子供が秘密を教え合うみたいに小さな声で話す。

「まず、ちょっと大きめのグミを一つ、どっちかの口の中に入れるんだ。んで、それをお互い舐める。終わり。」

「えっ、それだけでいいのか?」

「ああ。まっ、ものは試しだ。やってみようぜ。あ、口は少し開いておけよ」

「…?うん」

ヨハンは喋りながら、ポケットからグミの入ったイチゴの絵が描いてある小さな袋を取りだして、ぽいと自分の口に一つ入れた。

「んじゃ、キスするぜ。」

「あ、待………っん」

心の準備が出来てなくて俺は体を後ろに少し引いたのに、ヨハンはそれを無視して俺に口付けた。
ヨハンの唇は温かくて、しっとりして…これがキスなんだ、って思った。

凄い。心臓がこれ以上無いくらい騒いでる。

顔が熱い。
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