戦場の愛
□看病をして
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寝入った刹那を眺めて、しばらく経った。苦しそうな表情がわずかではあるが、和らいできた。それに微笑んだロックオンは、ゆっくりと刹那の頭を撫でた。すると、小さな唸り声を発した刹那が目を覚ました。
「起きたのか?」
「……ろっくお、ん?」
半覚醒といったところだろうか。目をトロンとさせたまま、寝起きのかすれた声で呼んだ。
「まだ寝ぼけてるな……体調はどうだ?」
「ん……だいぶ、いい」
体を起こす刹那を支えると、サイドに用意していたボトルを渡す。
「水分取らないと脱水症状になるぞ」
素直に受けっとった刹那はボトルに口を付け、一口ひとくちゆっくり飲んだ。その間に、新しい着替えと濡れたタオルをベッドに置いた。
「汗拭いて着替えろよ。じゃないと悪化する」
「すまない……」
汗を吸い込んだ衣服は体に張りついて、冷たかった。ロックオンに言われるまま服を脱ぎ、のそのそと体を清めて、新しい服に袖を通した。いつも以上に時間がかかったのは、頭がふらふらするからだろうか?
着替え終わった瞬間、オレはロックオンにまた寝かしつけられた。
「部屋に戻る……ロックオンが寝れないから」
「病人は気にすんなよ。それにもう少しで地上に降りるから、それまでは休め」
優しく微笑んだロックオンに刹那は、胸が暖かくなるのを感じた。それでも、やっぱりベッドを占領するのは悪いと感じた刹那は口を開いた。
「オレは大丈夫だから……」
「ダメだ。まったく……もう少し自分を大切にしたらどうなんだ?体調管理もガンダムマイスターの仕事だぞ。」
『ガンダム』の一言でおとなしくなった刹那に、ロックオンは心のなかで「このガンダムバカ」と苦笑いをこぼした。
「なぁ刹那、あんまり心配かけるなよ。」
「心配……?」
不思議そうな顔をする刹那は、表情がいつも以上に豊かだ。きっと熱のため、感情のコントロールができていないのだろう。
「そうだ。俺は刹那が大事だから心配なんだよ。」
「大事、って……?」
不思議そうな顔をした刹那が、じっとロックオンを見つめる。
「大切ってことだよ。ケガをしてほしくないし、病気になってほしくないって思うんだ。なったらなってたで、具合は大丈夫かとかが気になる。それが、大事で心配ってことなんだ。」
「そうか……」
刹那はそうつぶやくと、目を閉じて溜息をはいた。はいた吐息はまだ少し熱っぽかった。