s t o r y
□残暑
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暦上では立秋を過ぎ、季節は秋。
しかし暑さは和らぐ処か今年の最高気温をマークした。
「あっちぃ。」
大勢の隊士が生活する屯所にクーラーという名の文明の利器などあるわけもなく、隊服のスカーフを外し、上着すら脱ぎ、寧ろ裸になる勢いで暑さを凌ごうとする猛者共。
勿論、ゴリラ紛いの男のストリップは萌えるどころか吐き気を誘い、むさ苦しくて敵わない。
自分で言うのもなんだが見れるのは総悟位だろう。
(山崎はモヤシみてぇで情けねぇし、近藤さんに至っては裸になっちまうしな。)
実は自分のストリップが一番期待されている事には微塵も気が付かない土方。
「土方さんいやすか。」
「あ゙?」
珍しく屯所にいた総悟は暑さを全く感じさせない涼しげな顔で部屋を尋ねてきた。
流石にスカーフはしていないが、捲り上げられた袖にしてもベストは着用しているしどことなく涼しげ。
一方俺はYシャツのみ。なんかイラッとして思わず不機嫌そうな声が出た。
「オイオイ、鬼の副長ともあろうお人が夏バテですかィ?やってらんねーな、ってことで死ね土方。」
「なんなんだお前は!!夏バテは皆なるからね!?皆死ぬことになるからね!?」
「グチグチうるせー野郎だな。…そういや土方さん、旦那のとこにクーラー入ったらしいですぜ。」
「前半何か言ったろ。」
何だか激しく疲れた。
なんだかんだ言いつつ、気心が知れている俺達はお互いに容赦無い。
だからこそ疲れる。
幸せな悩みだと言われればそれまでだか、会うたび…いや、何かと命を狙ってきたり憎まれ口叩いたりと可愛いげの欠片もないが、腐れ縁というかなんというか…縁は異なもの味なものとは良く言ったもんだ。
(ちょっくら行ってみるか。)
クーラーには何物にも代えられない。
口振りからして、コイツも一度は訪問済みだろう。
思い立ったが吉日。
早速準備をはじめた。
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