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□バニラエッセンス
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いやいや、おかしいだろ。
とは言えない。頭がおかしい部長二人が相手ならボロクソに言ってやれるけど、初対面の女性相手じゃ何も言えなくなってしまっている。


「瀬戸さん…イヤ瀬戸様!あなたは萌え製造マッスィーンですか!?肌白っ!!腰細っ!けしからんもっとやれ!!てか藍沢様色っぽい!エロいぜ!!」


ハアハアと息を荒げながら鼻血を流す女性に為す術無し。ドン引きしている奈緒を見ていると折角綺麗に着付けてもらったものを着付けた本人によって大胆に崩された。


「……え?」

「あ、帯支えてて下さい!」

「あ、はい。」


胸元を広く開けられて驚くものの、何事もなかったかのように笑顔で指示を出されてしまえば大人しく従うより他に道はない。
奈緒は写真部の部長に鎖骨がについて熱く語られながら同じ様に襟元を広げられていた。あの遠い目を見ればすぐわかる。
どうやらやっと奈緒も諦めがついたらしい。
これから写真を撮るにあたって男として少々屈辱的な『誉め言葉』や表情、ポーズなどを要求されるのだ。
早々に諦めて割り切ってしまわなければやっていられないのが実情だ。
イヤだイヤだとは思うが財政困難な現状には変えられない。やるしかないのだ。

短いながらも纏められていた髪も乱されていくのをどこか他人事のように認識しながら俺はされるがままに突っ立っていた。

そしてダラッと鼻から血を流し始めた女性にティッシュを差し出しながら奈緒と顔を見合わせた。
お互いなんだかもう、今自分の置かれているこの状況がおかしくなって笑い合う。


「ヤバい、色気MAXハイテンションなんですけど!自分の才能が怖いわマジで!」

「GJです!藍沢君までなんだか受けクサくなってッけしからんもっとやれ!!」

「なんだ、ただの神か…。」


いつの間にか増えていた広報新聞部部長についてはもう何も言うまい。
しかし折角和やかになった俺達の小休止をぶち壊してくれた三人には何だか殺意すら芽生えそうだ。(←奈緒の心情代弁中)

こうしてまた、乗り気でない撮影は始まっていくのだった。


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