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□糖蜜ハニー
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セーラー服は男のロマンらしい。


「馬っ鹿じゃないの?」


発言者に冷ややかな目線を向けている篠崎に俺は苦笑を浮かべた。


「ていうか男のロマンなんじゃなくて君たちのでしょ。」


興味がないと全身でアピールする篠崎に心底同感する。
俺も男だが、セーラー服にロマンを感じたことはない。


「…まぁそういう事なので今回は、」

「そこをなんとか!!」

「わっ!」


バンッと思い切りよく机に手をつき、上半身を乗り出して距離を詰めてきた発言者達に思わず身が引けた。
しかも情けない悲鳴つきで。


「ちょ、はるちゃんに近付かないでよ!冬哉に言い付けるよ!?」

「そんな殺生な!!」

「……篠崎、いいから。」


発言者達、もとい広報新聞部の部長と写真部の部長のよく分からないハイテンションと篠崎の異様なまでに過剰な反応により、この場から穏便な話し合いの空気は霧散して跡形もない。


「だってはるちゃん!黙ってたら着せられちゃうんだよ!?」

「彼らもそこまで鬼じゃないって。」


憤る篠崎にふわりと笑いながら、目の前に座る二人にも ね?と笑いかけた。
まさか、彼らだって人の子だ。
立派な男子高校生にいくらロマンといえどもセーラー服なんか着せるわけがない。


「み、見逃してなんかあげませんよ!?私達はそそそそ、そんな笑顔なんかじゃほだされませんからね!?」

「その通りです!!いくら瀬戸様が小首傾げてみても、どどどど、動揺なんかしませんから!かかか、か可愛いなんて思いませんから!!」

「ね?信用ならないでしょ?」

「…………。」


もう誰も信用できない。
着せるつもりなんですか。そうですか。
鬼の子なんですか。分かりました。




広報新聞部は校内新聞の発行を中心に、半年に一回よく分からないランキングを集計している、一応重要な活動をしている部活だ。
裏では写真部と提携してこれまたよく分からない写真集などの販売を行なっていたりする。
その売り上げを部費とし、生徒会予算を受け取らない代わりにその無許可写真集を黙認しているというわけだ。

しかも今年は永城のお陰で生徒会予算は火の車。赤字も良いところなのだ。それを盾に強気にモデル交渉を繰り返す広報新聞部に辟易している。


「もーしつこい!久我でも呼んでくる?」

「久我も疲れてるから…。」


ここは強面な久我に楽に助けてもらおうという魂胆が丸見えな篠崎をなんとかなだめる。
久我だってこの交渉をされているのだ。しかもつい昨日、しつこさに負けて渋々了承してしまい絶賛落ち込み中なのだ。
そっとしておいてあげたい。


「大体、僕らがそんなもん着て何かメリットでもあるわけ?目の保養以外で。」

「萌える!!いや、売り上げが伸びる!」

「それは君たちの利益でしょ?伸びたって僕らには何の得もないし。……あ、」


嫌な予感がした。

だって篠崎悪人顔してる。
なにそのイイ笑顔。


「それ着た写真を乗せたら、売り上げの5割徴収。」

「…せめて2割、」

「8割でも構わな 「是非とも5割でお願いしますぅぅうう!!」」


にっこりと素敵な笑顔を向けてきた篠崎に気が遠くなった。


「交渉成立!」


ハートを飛ばしそうな勢いで言い切った抱きたいランキング二年連続一位の彼は可愛い人間の皮を被った悪魔でした。


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