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□きみをみた日
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7月中旬
梅雨もすっかり明けた暑い今日この頃
カラリと晴れた空はムカつくくらい澄んでいて、散らばる雲が夏らしさに拍車をかけている。

そんな爽やかな熱気が溢れる外を人工的な冷気に包まれている校舎から眺める。
暑いのも寒いのも苦手。
典型的な現代っ子である俺は、エアーコントロールされた過ごしやすい環境が一番好きだ。


こんな俺に親は何も言わない。
理由は簡単、良家のゴシソクサマはこのくらい無気力な方が扱いやすいから。
単純明快過ぎて返す言葉もない。
でもこの年になってしまえば親の無干渉や放任主義は寧ろ嬉しい。
幼い頃の寂しがっていた記憶なんかは遠の昔に消え去った。


窓の外には大勢の帰省する生徒が付き人を従えて歩いている。
普段はキャーキャー喚き散らしてウザいだけの奴等がやけにキラキラして見えるのは気のせいだ。


「…ばかばかしい。」


何だか気分が悪い。

あぁ、気分が悪い。

気分が悪い理由がわかっているから尚の事苛ついてしまう。


…こんなところで苛立っていても仕様がない。というか苛ついている時に校舎内にいて良いことが起こった試しがない。

大きなため息をついて、窓辺から離れる。
和やかな喧騒に未練なんて感じないけど、キラキラひかる日差しを浴びて笑う彼らが羨ましいのは事実だった。


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