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side 雨宮
自分が酷く情けない。
寮の自室で寝転びながら、重い溜め息を吐いた。
秘密裏に生徒会へと呼び出されてから、そんなに日は経っていない。
親友であり、緋月会長の親衛隊長を勤めている楓と、僕と同じで瀬戸悠様の親衛隊に所属し、幹部の越波蒼の三人で初めて生徒会室のあるフロアに(というか専用エレベーターも初めてだった。)踏み入れた時 瀬戸さんは何とも言えない顔をしていた。
それに心を痛ませたのは何も僕だけではないはず。
「悪いな、いきなり。」
ゆったりと椅子に腰掛けている会長は同い年とは思えないほど威厳たっぷりだった。
精悍な顔に刻まれた疲労の色は役員皆一様に酷かったが、瀬戸さんと会長は更に酷かった。
「いえ、御構い無く。」
不安を滲ませながらも恭しく礼をした楓に続き、僕と蒼も頭を下げる。
「来て早々悪いが、掛けてくれ。」
備え付けだろうソファを示され、恐々と座る。
僕達に負けないくらい不安そうな顔をしている瀬戸さんが心配だ。
「どーぞ。」
会計の竹内祐希様に、にっこりと笑みを浮かべて、目の前に置かれた紅茶。楓には甘そうなミルクティーで蒼には珈琲。
三者三様の飲み物に首を傾げると、それに気付いた竹内祐希様は再びにこやかに微笑んだ。
「瀬戸先輩と会長からよく聞いてますから。」
それに頬を染めたのは僕と楓だけで、蒼は軽く笑っただけだった。
…嬉しいくせに、素直じゃないなぁ。
そんな蒼をみて楓と笑えば睨まれた。
「単刀直入に言う。」
ソファの向かいに会長と篠崎尋斗副会長が座り、横には竹内様と瀬戸さんが並んで立っている。
その後ろのデスクに支倉様と久我様、そして夏川様が神妙な面持ちで座っていた。
「永城真央に、常識を叩き込んでくれないか?」
「「え?」」
「はぁ?」
「あ、このメンバーに鈴木圭君も加えて。」
言い忘れてた!と言うように篠崎様が明るい声で付け足したが、そんな事はこの驚きに比べれば心底どうでも良かった。
あの宇宙人と名高い永城真央に?
瀬戸さんの大嫌いな永城真央に?
クラリと目眩がしたのは蒼も同じだったようで、額に手を当てている。
「どうして、俺達なんですか…。」
呟いた言葉に同意するように会長を見れば、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「俺達で何とかしてもいいんだが…余計な問題が多すぎんだよ。」
「無駄に波紋を広げるだけだしね。」
苦肉の策だと言わんばかりの役員の中で、篠崎様だけは何故か満面の笑み。
「篠崎、顔に出てるから。」
瀬戸さんの呆れ声も気にせず、にこにこと笑みを絶やさない副会長。
「みんなで不安そうな顔してたら陰気くさいじゃん。一人くらい笑ってた方がいいんだって。」
「ホント、イイ性格してますよね。」
着いていけない。そんなオーラを醸しながら溜め息を吐いた竹内様。その台詞の意味が分かったらしい役員の方々は強く頷いている。
「はるちゃんなんか心配し過ぎてげっそりなんだもん。いっつも二人になると…」
「うわぁー!!」
普段穏やかで物静かな瀬戸さんの突然の大声に驚いたのもやっぱり僕達三人だけ。
「それ、絶対、言わないって…!」
「様に気を付けるねっとは言ったねぇ。」
「………。」
負けたらしい瀬戸さんを竹内様や久我様が慰めている。
それを横目で見て、少し笑った会長が真剣な眼差しでこちらを見た。
「引き受けてくれないか?」
緋月会長直々に、生徒会室にまで招いて頂いての頼まれ事を断る理由はない。
僕達三人はしっかりと頷いた。
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