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side 支倉



例えば世は江戸時代末期。
時の人 坂本龍馬は視点が変われば正義が変わることに気付いていた。
現代においてもその定義は変わることなく生き続けている。

じゃあ、コイツはどうだろうかとぼんやり考えた。

面倒事に関わらない立ち位置を見極めるのに関しては自信がある。
生徒会に所属している時点で幾らか面倒なんだが、その分特権もあることだし多目に見てもらうとしよう。
親も喜んでたし、知らず知らずにご機嫌が取れて一石二鳥だ。

話は昨日に遡る。
編入生の案内に抜擢された瀬戸。
送られてきた詳細はあんなのだったし、時期的(というか日取り的に)微妙な時期の編入だったから皆心配していた。勿論、瀬戸を。
土曜だというのに全員生徒会室に揃ってしまい、笑いあったのはなんだか擽ったい感じがしたが皆が瀬戸を慕っている事実が如実に現れた気がして嬉しかった。


そして報告。
編入生は予測通り 頭が弱くて 無駄に正義感が強くて 人類みな友達計画を爆進中。らしい。


穏和な夏川も敬語が使えない奴に好感はもてないらしい。素でボケていてもやっぱり体育会系。
久我も不良ルックから予想出来るように上下関係をきっちり出来ない奴は見捨てるスタンスだし。ちょっと過激だけどな。

そして緋月の『…一回、実物を見ておくか。明日の朝、食堂集合な。』の一言で現在の地獄絵図てきな階下の状態を見ているわけだ。

いわゆる役付きと呼ばれる人には特別席である二階で食事をとる権利がある。

生徒会と風紀は全員であとは他の委員会の委員長のみが役付きとされている。
しかも毎年毎年顔がいい人達ばかり集まるから人避けにもなって、上手く機能している。(本来は激務の合間を縫って食事にくる役員が席争奪戦に加わらなくても良いようにという配慮から出来た制度だ。)

お陰で相当な騒ぎになっている下の階を呆然と見下ろしていても被害はない。


「お前らは人として最低だ!!!!」


一際大きな声と共に立ち上がったボサボサ君。
発端はボサボサ君の同室者が美形だった事だ。夏川の後輩の爽やか君。名前は忘れた。たまに夏川が話すときに名前が出てきてたから親しいのだろう。
確か小等部から一緒だと言っていた気がする。

で、だ。
この学園の常識からいくと編入生のそれは許されざる行為だ。
しかも彼は新歓で素晴らしい運動神経を発揮したばかりで年下スレのなかでは一番の人気を誇っている…と篠崎が言っていた。
それは納得できる。
爽やかで運動神経抜群で美形。しかもまだ手の届く範囲にいる。

魅力的な物件だ。

そしてそんな人物の隣を歩くのはボサボサ君だ。
自分で自分の容姿を分かっていれば、陰口程度の中傷には耐えるべきだ。

だってどう見てもマシになりたいと思えばなれそうな出で立ちだもんな。
取り敢えず眼鏡外して前髪切って髪をとかせばどうにかなりそう。でも、しない。


俺から言わせてもらえば自業自得。


しかも瀬戸の話も聞いてるし、助ける気も起きない。

そして宙に食器が舞はじめたとき、更なる爆弾が投下された。


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