t e x t

□8
2ページ/4ページ





扉を開けると、いつもと変わらぬ光景。
自分の机につき、PCと睨み合っている支倉。

俺の入室に気が付かない程集中していて、なんだか笑えた。


「こんにちは」

「こんにちは、竹内。」


給湯室から出てきた竹内が俺に挨拶をしてきた。その声で俺に気が付いたらしい支倉がゆっくり振り向いて 早いな と口にした。


「支倉には負けるって。」


笑いながらそう言うと難しい顔をして


「瀬戸は相変わらずだな。」


と言い捨てた。
どういう意味か分からない。
相変わらずってなんだ。


「瀬戸先輩はそのままが一番ですよ。」


首を傾げた俺に竹内はクスクス笑いながら褒めてるんだか分からない事を言い出す。


「でも、もうちょーっと気にしても損はしないと思うよ。」

「だから何の話だよ。」


ひょっこりと話しに入ってきたのは篠崎だ。
俺から言わせれば、篠崎だって相変わらず失礼だ。


「それをマジで言ってる瀬戸先輩、俺好きですよ?」


篠崎の一言で少々機嫌が悪くなった俺に竹内は甘い笑顔を向ける。
…天然タラシめ。


「竹内、そーゆーコトは本命の子に言いなさいって言ってるだろ?」


うっすらと紅くなった頬を隠すように自分の机に向かった。
俺が去った所で三人が井戸端会議を開催しているが、シカトだ。そんなの。
大体失礼なんだ。
あいつら三人は際立って失礼。

ドサッと荷物を下ろすと丁度いいタイミングで扉が開いた。


「…入口で何やってんだ篠崎。」

「はるちゃんについての定例会議〜。」


入ってきたのは緋月と湊で、入口の真ん前で円陣を組んでいる三人を見付けると、呆れた声で篠崎に問いかける。

緋月と湊が一緒なのも気になるが、湊のげっそりした顔の方が気になる。

てか篠崎、よくもぬけぬけと…。


「そんな会議いらない。」

「いるよ!はるちゃん何言ってんの?」

「いらない、必要無い、無駄、邪魔。」

「うわぁ酷い!」


酷いと言うわりにニコニコしている篠崎はやっぱり読めない。
そして竹内。お前笑ってるけど無駄、邪魔辺りに含まれてるんだぞ。


「悠はモテモテだね。」

「バカにしてるの?湊。」


クスクス笑いすらイラッとする。
更に緋月。その生暖かい視線は止めてほしい。【俺は関係ないけどバカだな】みたいなその空気!馬鹿可愛い人を見るようなその目!父親みたいで嫌だ。


…このままコイツラの相手をしていたら俺のみが疲れる。


そう判断して書類に目を通し始めてしまえば皆も自身の机に向かった。


.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ