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□恋ではなく目眩
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痛い。
ただ痛いだけならどんなに良かったか分からない。
切り裂くような痛みなら繋がれた手を振り払ってしまえばすむのに、甘く痺れるような痛みはどこか愛しい気がして割り切れない。

緩く塞がれる唇に、泣きたいような怒鳴りたいような気分になって目を閉じた。

多分、ムカつく事に俺よりはるかに頭のよろしいアイツなら気が付いたハズだ。

いつもみたいに暴れない俺に、アイツの口角が上がるのが分かった。


『お前は俺を好きになる、絶対に』


自信に満ちたその顔を悔しさで歪ませてやりたいと思っていたのに、どういう事だ。
自意識過剰で何でもできるヤな奴で男前だけど変態。そんなろくでもない男に…そう、男に。

ばか しね はげ。

まんまと道を踏み外した俺は、惚けてきた頭で思いつく限りの悪態をつく。

えろまじん じかじょー へんたい

そんな脳内の悪口にさえ気が付いているような余裕な顔が憎たらしい。
きっと、悪態の裏にある自分でも分からないような本心さえコイツは然り気無く見付けるんだろう。











悔しい。

余裕綽々なアイツを見れば見るほど悔しくて、深くなる口付けに涙が混じった。

きっと、こんなに悔しいのはアイツのせいだ。
俺ばっかりこんなに好きみたいで余裕ないのに、まだ笑っていられるアイツが憎い。


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