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□君の遺した体温に泣きたい位吐き気がするよ
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もしかしたら、初めてかもしれない。


「…熱でもあんのか?」

「うるせーよ。」


大人しくアイツの隣、自分の机の椅子に素直に座ると訝しげに俺を見てくる。
そんなに珍しいか。
俺が素直なのはそんなに珍しいか。

少々イラッときたがグッと我慢する。


「明日は雪か?」

「………。」

「…お前、なんかあったか?」


いつものようなテンポの良い会話をさけて、言い返しそうな自分を押さえ込む。
普段のアレは深く考えず思ったまま言葉を吐いてるからこそ得られるリズムの良さだ。
今それをやったら余計なことを言ってしまう気がして上手くテンポに乗れない。
結果、怪しまれた。

自分でも今の俺は怪しいと思うよ。


「…別に何もない。」

「嘘つけ。」

「いや、リアルに。」


近い距離に高鳴りそうになる心臓を必死に落ち着かせる。
落ち着け俺。
今隣にいるのはデカイ犬で決してあいつじゃない。
だから、頼むから落ち着け俺の心臓。

段々顔まで赤くなるのが自分で分かった。
熱い。
身体中が熱くて冷まそうにもどうすれば良いのか分からない。


「…お前、顔真っ赤だぞ?熱でも、」

「さわ、んな!」


注意を他に向けていて、アイツの行動に反応が遅れた。
少し触れた冷たい手が更に俺の心臓を駆り立てる。

奴の手を思いっきり叩き落としてからハッと我に帰るも時すでに遅し。
腕を乱暴に掴まれ、いつも座っているベッドへ投げられた。

慌てて上体を起すも、素早く体を跨がれて肩から押さえ付けられる。


「な、に!」


痛くはない。
だけど、いつもと違って鋭く尖った視線に身体がすくむ。

抵抗らしい抵抗も出来ずに両手首を片手で纏められ、恐怖からか息が詰まった。


「何じゃねーよ。お前どうした?今日おかしいぞ。」


泣きそうな俺を宥めるように、さっきとは打って変わって優しい声を掛けてくる。


『お前どうした?』


そんなの、俺が聞きたい。
どうしたんだよ、俺。


『今日おかしいぞ。』


今日おかしいんじゃない。

アイツの事を好きだと認めてからずっと。気付かされてからずっと俺はおかしい。


なんだこれ。


胸の中心が甘く疼いて、締め付けられる。

痛い。





君の遺した体温に泣きたい位吐き気がするよ





キラキラ光って、甘い。

所詮、初恋すらまだなお子様思考の俺が思い描いていた‘好き’は幻想だった。



優しく触れ合った唇。
何度も経験したはずのそれは、今までとは比べ物にならないくらい熱くて死んでしまうかと思った。



((す、き…。))



好き がこんなに痛いなんて知らなかった。


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