テガミバチ

□伝染(ザジラグ)
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あの倉庫での一件以来、
ザジとラグは以前通りになっていた。

他愛無い会話やふざけ合い、
配達の打ち合わせも当たり前にできる。
いつもの日常が戻ってきたようだった。

しかしそのザジの態度が逆にラグを不安にさせていた。

あの日のことを思うと胸が苦しくなる。
まるでザジが自分に言っていたような感覚が、
今度はラグ自身に伝染ってしまった気がした。



そんなある日
配達も終わり家路に着こうと支度をしていると、
たまたまザジに会い、
途中まで一緒に帰ることとなった。


「そこで鎧虫がイキナリ襲ってきてさぁ―――」

「―――そっかぁ。大変だったんだね。」

他愛ない会話を交わしながらも
ラグは内心穏やかではなかった。


ザジにまた無視されたら―――
ザジは何を思ってあんなことを言ったんだろう―――
ザジはあの時最後に何が言いたかったんだろう―――


「おい、ラグ!」

ザジの呼び掛けが、周りの音が耳に入らないくらいラグは思い込んでしまっていたその時だった。

「ラグ!後ろっ!!」

「えっ?」

ザジの呼びかけに反応が遅れ、
気付けばラグの目前には猛スピードの馬車が迫っていた。

「!!危ねぇっっ!!!」

咄嗟にラグの腕を引く。
その勢いのまま体ごとラグに覆い被さるように地面に伏せた。

間一髪、馬車が2人の横を猛スピードで通り過ぎる。

「ラグ、大丈夫か?!」

ザジはすぐさま声をかける。

「ん…。ザジ…?……!!」

「ったく、どーなってんだよ。
しっかり前見て手綱押さえとけって、なぁ。」

同意を求めようと視線を落とすと
目があったラグは目の端に涙を浮かべ、耳まで真っ赤になっていた。

ザジの心臓が一気に高鳴る。

「あ…。」

いくらラグを庇う咄嗟の行動とはいえ
組み敷くような格好になっていることにようやく気付く。
状況に理解したザジは慌ててラグから離れた。

「あ、ごめっ…、け、怪我ないかっ?!」

「う、うん…。」

ラグの体を起こそうと手を伸ばす。
頬を紅潮させたままラグはザジの手を取り、なんとか立ち上がった。

「家まで送ってくから…。」

「だっ、大丈夫だよっっ!!
もうそこだし!
怪我もしてないからっ!!!」

急に余所余所しくなったラグはザジに礼を告げ足早に去って行ってしまった。



「(どうしよう…今度は僕が避けてるみたいになっちゃった…)」

胸の鼓動が止まらない。
説明できない感情が湧き上がってくる。

ラグは家までの道をひたすら走った。










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