書物
□手を伸ばす
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「やんのかてめぇ」
「てめぇこそ、やろうってのか?」
売り言葉に買い言葉。挙げ句の果てには手がでて殴り合い。
本当は、こんな事がしたいわけじゃない。
分かってくれとは言わねーけど、少しくらい普通に会話したって良いじゃねぇか。お前はイヤかもしれねーけどよ、俺はお前と会話してーよ。
「分かったか?お前たち」
「「は〜い、食満先輩!」」
「わ、わかりました」
そんな声が聞こえてふと横を見れば、用具委員会が何かしてた。
(ああ、またあの笑顔だ)
俺には絶対に見せない笑顔。きっと、見せてくれと頼んでも見せてなんてくれないであろう笑顔。あいつは俺なんてみてくれない。だから俺は、喧嘩をする。そして、こうやって遠くから時々あいつをみるんだ。
俺も、女々しくなったもんだな。
届いてほしいと、いつも願ってしまう。
手を伸ばせば届くだろうか…
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