愛されて愛されて。

□愛されて愛されて。14
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可笑しな話だろ。俺みたいな化物が、たった一人のひょろい奴を好きになってるなんて。大体、俺みたいな奴が人を好きになっちゃ駄目なんだ…。分かってる、分かってんだけどよ……。

「それで良いんじゃないか?」

門田が言った。隣に居た門田に、愚痴を零していたため、奴はそれに応えたんだろう。
今日の俺は、俺だったら直ぐにキレているだろうというくらい、それくらい、グチグチしていた。
門田、呆れてくれたって良いんだぜ。怒ってくれたって良いんだぜ。
なのに何でお前は、お前はそんなに………

「誰が誰を好きになったって、誰も否定する権利なんざない」

悲 し い 顔 を し て い る ん だ よ ?
そんな顔で、そんな笑顔で、俺を、俺を。嗚呼、お前、お前は、お前は……ッ。

「だけど、静雄。私は―――」
「ッ!」

門田の真っ直ぐな瞳に射抜かれ、情けなくも怯んでしまう。俺らしくない。それほどまでに俺は動揺しているのか。
嗚呼、止めてくれ。止めろ、その先を言うな。言うんじゃねえ。

「私は……。否、私も……」
「……ッ、」

おねがい きづかせないでくれ。
おねがい とらないでくれ。
おねがい おねがいだから。

「私も、アイツが好きだ」

ガツンッ!
鈍器で殴られたような気がした。重く、響く。
痛い、痛い、痛い、痛い、苦しい。
苦しくて堪らない。どうして、どうして…嗚呼、どうしたらいい。

「な、んの事…だよ、」
「お前は名前出さなかったけどよ、それ、“アイツ”の事だろ?」
「ッ、アイツ……って、」

気付かないフリをする。無駄だと分かっているけれど。
なあ、門田。お前はアイツが好きなのか。

「葵だよ」




泣いていいですか?

10.06.13
 

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