愛されて愛されて。

□愛されて愛されて。06
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ゴールデンウィークは、臨也と新羅と京平とシズちゃんと遊ぼうと思っていた。
全員で、なんて馬鹿なことは言わない。シズちゃんとは、二人で遊べば良いと思うし。
日課になっていた屋上で昼食を取る時に、ふと新羅が口を開いた。

「ゴールデンウィークはさ、僕の家においでよ。同居人にも会わせたいし」
「へぇ…。セルティと新羅の愛の巣じゃなかったっけ?いいよ、遠慮しておく。俺は葵と遊ぶから」
「愛の巣なんて、馬鹿なこと言わないでくれ。大体、臨也には聞いてないよ。俺は葵に言ってるんだ」

セルティ…か、会いたいなぁ…。後に池袋で都市伝説となる人物。
俺は、ずっと前から気になっていたんだ。今まで会った主要人物達が、性転換していたから、セルティはどうなっているのかと。
まあ、俺の予想では女のままだと思うんだけど。少しだけ、女尽くしになるんじゃないかと思って。
何より、セルティは女のままで良い、という俺の希望も有った。

「俺、セルティって人に会いたいなぁ。あと、新羅の家にも行ってみたいし…」
「よし!明日からだよね、ゴールデンウィーク!全部とは言わないさ、一日だけでも良い!私の家に葵が来てくれるなんて…っ!ああ、なんて素晴らしいんだろうっ!」
「新羅、調子に乗るなよ」

新羅と臨也は、興奮したりすると、饒舌に喋るみたいだ。まあ、臨也の場合はいつものことなんだけど。
あれ…?もしかすると、新羅もいつものことになるのかな。まあ、どっちでも良いか。

臨也と一緒に、新羅の家に行くことになった。俺が新羅の家を知らないから。
臨也は、俺を俺の家まで迎えに来てくれるらしい。凄く有り難いことだ。




♂♀




輝かしい朝、俺はスッキリ起きて、少し興奮気味に準備をしていた。
この世界での友達の家に遊びに行くなんて、初めてだ。だから、今にもスキップしそうな勢いだった。
何を着ようか迷ったけど、淡い水色のワンピースを着ることにした。久しぶりに私服でスカートを着たため、なんだか変な気分だった。
あんまり慣れないなぁ…。制服もスカートだけど、中にハーフパンツを穿いているから、スカートといった感じでは無い。
ピンポーンと、在り来たりなチャイム音が鳴り、臨也が来たことを知らせる。俺は慌てて玄関に行き、扉を開ける。

「お、おはようっ」
「おはよう。…凄く可愛いよ、それ。似合ってる」
「あ、ありがとう。臨也も、可愛いよ、」
「っ、……ありがとう」

照れたように笑う臨也は、綺麗だった。白い頬を淡く赤に染めていて、艶やかだ。
臨也は、全体的に黒で統一されていた。けれど、ヘアピンの赤が、可愛らしさを出していた。

「それじゃあ、行こうか」

また、以前のように手を差し出される。その動作はやはり自然で、紳士的だった。
その手を、しっかり受け取って、臨也と二人で笑い合う。ちゃっかり恋人繋ぎをすると、臨也は数回目を瞬いた後、少し照れたように笑った。







10.04.12
 

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