愛されて愛されて。

□愛されて愛されて。03
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新羅とも仲良くなって(彼女は元から好意的だったのだが)、最近の俺はよく笑うようになったと思う。
そんな俺の笑顔を見て、臨也と新羅はよく固まる。もう、効果音がつくくらい。ピキッて。
普段なら、落ち込んで鬱になりそうになるが、最近は物凄く機嫌が良いから、それは無かった。

そんな機嫌が良かった俺に、神様がいい加減にしろと言ったのかもしれない。

俺は、あまり会ってはいけない人物と会ってしまった。といっても、会っていけないのは、キレている時と、喧嘩をしている時だと考えている。
勿論、怒りの沸点が低いので、キレさせないように気をつけるのも重要だ!
と、こういった具合で、かなりデリケートな感じ(体はデリケートじゃない)になっている。
そもそも、デリケートって表現で合っているのかすら、分からなくなってきた。
ヤバイヤバイ、最近トリップして、ボケてきた。直さなきゃ、マズイ。

「お前っ!コイツがどうなっても良いのかっ!?」
「……へっ?」
「手前……っ、」

考え事をしていたら、急に何かに掴まれる感触(というよりは、痛み)に、思考を戻される。
ああ、なんてベタな展開なんだ。そして、なんて足手まといになっているんだろうか。
そう、俺は今、不良から人質にされています。ちょっとギリギリされて、痛い。

「ちょ、俺関係ない、」
「平和島ぁぁああ!!コイツがどうなっても良いのかっ!?」

 聞 い て な い 。
思いっきり殴ってやろうかと思ったけど、生憎俺にはそんな力なんてないし、殴ったとしても、その後やり返されたら終わりだ。
俺は、自分を護る術を知らない。俺は、自分を護る術を持たない。
だけど、逃げる術なら、知っている。逃げる術なら、持っている!

「…ね、お兄さん。俺の言うこと聞いてくれる?聞いてくれるよね。離して、」
「そしてさ、消えて」

思い切り不良の鳩尾を叩く。ぐえっと蛙が潰れたような声が聞こえる。
続けざまに、不良の右手を捻り上げる。思い切り、容赦無く!不審者対策ね。
グリグリギリギリ、軋んでいる骨や筋肉なんて、聞こえないフリをした。不良の骨と筋肉だから。

「ぐ、ああっ、手前っ!」
「……消えて」
「ざけんじゃねぇぞおおおお!!!」
「、っ!?」

ヤバイ。非常にヤバイ。調子に乗りすぎたかな。否、どちらでも同じ結果か。
男と女の力の差は歴然。こちらが多少優勢であっても、右手以外全て空いている。
つまり、俺は今、左拳で顔面を殴られようとしている。思わず、瞼をぎゅうっと瞑る。

痛い!
その衝撃は―――いつまで経っても来なかった。

「…え、」
「女に手ぇ、出してんじゃあ……ねぇええええ!!!」
「ぎゃああっ!!」

バキッという音と共に、男は飛んで行った。
男の左拳は平和島さんが受け止めて、そのまま右手で思い切り殴る。そうしたら、飛んだ。
俺は、未だにピクリとも動かない屍と化した不良を見つめ、その後平和島さんに視線をやった。
目が合うと、逸らされる。目が合うと、逸らされる。逸らされる。逸らされる。掴む。

「っ、な、な、なんだよっ!?」
「平和島さん…有難う御座いました。助かりました」
「、あ、ああ…。別に…、ど、どうってことねぇよ、」

成程。お礼を言われなれてないのか。可愛いなぁ…。顔を真っ赤にして、視線を泳がせる平和島さん。
平和島さんの、女版はこんな感じなんだ…。あ、デジャヴ。まあ、いっか…。
平和島さんは、来神の男子の制服を着て、金髪だった。うん、男装中…だよ、ね?
声は男声じゃなくて、程よいアルト。だから、女だと思った。

「いきなりですが、平和島さん。名前で呼んで良いですか?」
「お、おお。寧ろそうしてくれっ!」
「(ん?なんか、キャラが……)えっと、静雄…?」
「お、おう!」
「あ、でも、女の子だからシズちゃんのが可愛いかなぁ…」
「っ、お、俺は、



!」
「じゃあ、シズちゃんね!」
「あ、ああ、」


01.04.10
 

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