愛されて愛されて。

□愛されて愛されて。01
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力を己の物にするのは、無意識的なことだった。だから、難しかったとか簡単だったとかは、無い。
いつか、こうやって自らの意思でどこかの世界へ行くとは思っていた。
でも、そうそう行きたいと、生きたいと思える世界は無かった。
ちなみに過去形である。

今は、そう。
今までこの世界で存在していた人間のように、俺は在る。
来てしまった。興味の無かった他の世界へ踏み込んでしまった。
否、興味を持った世界へ踏み込んでしまった。

デュラララ!!っていう、ライトノベルが有るのを知っている。アニメ化もされ、漫画化もされている。
詳しいことは知らないが、主要人物と大まかなことは知っている。実は、作品を全く見ずにこの世界へ来てしまった。

それが良いのか悪いのかは、謎だ。




♂♀




俺はまだ学生だったため、来神高校へ入学することにした。
確か、原作時では来良だったから、原作前なんだろうと、推測する。
ということは、俺は時間をきちんと設定していなかったということになる。
まあ、内容知らないから、どの時間枠かとかは詳しく設定出来るわけ無いけれど。

長ったらしい入学式も終わり、教室へ入り、自分の席へ座る。壁側だから、安心する。
すると、前の席にセーラー服を着た女子生徒が座る。どんな奴なのかと後ろから眺めていると、急に後ろを振り向かれる。
肩につかないくらいの漆黒の黒髪、端整な顔つき、深い透き通った赤い目。
彼女は美しいと、心の底から思った。

「ねえ、名前なんて言うの?」
「ああ…、椎名葵、」
「そう。あたしは折原臨也。よろしくね」

折原臨也…?まさか、あの、新宿の情報屋?いや、同名とかもあるし。…それにしちゃ顔が似てるしなぁ…。
爽やかな笑顔で差し出された手を、数秒遅れて受け取り、握手する。
白く透き通った肌は、彼女によく似合っていた。

「葵さあ、あたしのことは呼び捨てで良いからね?」
「…え、あ、ああ。折原?」
「違うよ!名前の方だよ。もう…」

他愛も無い話をしていると、仲が良くなってきて、そんなことを言われた。
ちょっと拗ねたようにする臨也は、可愛かった。綺麗と可愛いを持つ子なんだな。
神様は不公平だと思った。こんなに綺麗で可愛い子も居れば、俺のような平凡で女っ気の無い女も居る。
まあ、俺の場合は異端だけれども。

「臨也って名前、男の子っぽいと思わない?」
「まあ、確かに(実際、男の名前だったし)」
「ま、名前なんてどうでも良かったんだけどさぁ」

じゃあ、なんだって言うんだ。遠まわしな言い方をする子でもあるんだと、理解した。
というか、この子は、あの、折原臨也なんだと分かった。でも、パラレルワールドってやつで、性転換されている。
でも、折原臨也は折原臨也で。それでも、また違う折原臨也でもあった。
ああ、なんかややこしいな。

「結局、どうしたの?」
「んー…。葵に呼ばれると、意味を持つって感じかな」
「…ん?」
「だからね、





彼女は、少し照れたように笑った。


10.04.09
 

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