Short Story 3rd


□お菓子の罠
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「ねえ、景吾。お菓子ちょうだい?」

「お菓子?」

「うん。だって今日はハロウィンでしょ?」

「成る程な。なら、ちゃんと言うべきことがあるだろうが」

「言うべきこと?」

「そうだ」

「んー…あ、分かった!えっと、お菓子くれないといたずらしちゃうよ?」

「何で日本語なんだよ」

「日本語じゃ駄目なの?」

「ああ。それじゃあ、お菓子はやれねぇな。出直して来い」

「あ、待ってよ。そ、そうだ!思い出したよ。トリック、アンド、トラップだ」

「そりゃまた随分だな。いたずらして尚且罠にはめるってか」

「あれ?違った?えっと、じゃあ、トリック、アンド、ト、トラ、トリ、トリート?」

「あーん?いたずらもするし菓子もくれだと?そもそもアンドが違うんだよ。アンドの意味を考えてみろ」

「アンドの意味?…何々と何々?」

「そうだ。だったらおかしいだろ?」

「そっか。いたずらかお菓子かって聞きたいんだから、」

「だから?」

「トリック、オア、トラップ!」

「…ったく。戻っちまってるじゃねぇか。菓子はどこいっちまったんだよ」

「菓子?…んー、じゃあ、トリック、オア、えっと、トリートだ!」

「やっとかよ。よくできました。ほらよ」

「うわーっ。こんなにいっぱい?ありがとう!」

「ふん…たいしたことねぇよ」

「食べるの楽しみだな。じゃあね、景吾」

「ああ。…って、おい。待ちやがれ」

「え?何?」

「自分だけ菓子貰ってさっさと行こうとするな」

「自分だけ?って、景吾もお菓子欲しいの?」

「トリスト、オア、トリート」

「はあ?何それ。景吾だって間違ってんじゃん」

「間違っちゃいねぇよ。俺からお前には、トリスト、オア、トリートでいいんだよ」

「えっと、お菓子あげないと…ト、ト、トリスト?」

「そうだ」

「な、何されちゃうの?…私」

「さあな」

「と、取り敢えずはお菓子をどうぞ」

「あーん?俺様が菓子なんざ欲しがると思うか」

「だって」

「なら、トリスト、イエット、トリートだな」

「えーっ。また違うの出してくるし。イ、イエ、イエ…?」

「イエットだ」

「イエット?…それって、お菓子をどうすればいいの?…お菓子を何してトリストなの?」

「返事は?」

「返事?返事がいるの?」

「ああ」

「えっとー」

「イエスかノーか」

「イエス?ノー?…じゃあ、ノーで」

「ノーだと?本当にノーでいいんだな?」

「え?…あー、やっぱ、イエス、イエス」

「イエス?ふん…イエスでいいんだな?」

「ま、待って!やっぱノーにする」

「ノーか。そうか。お前はノーを選ぶのか」

「ち、違う!違うよ、景吾。そうだよ、イ、イエスだよ」

「ほお。イエスか」

「もー、やだ。分かんないよ。そもそも単語の意味が分かんないのに答えられるわけないじゃん!」

「なら、行くぞ」

「え?行くって何処へ?」

「イエスなんだろ?だったら今からでも構わねぇよな?」

「今からでも?…いや、何かちょっと景吾怖いし…って、ちょっと待ってよ。手、引っ張んないでよ」

「ぐだぐだうるせぇよ。行くって言ったら行くんだよ」

「だから行くって何処に行くのよー!」

「………‥」

「嫌だー!景吾に拉致られるー!」

「………‥」

「神様、仏様、跡部様ー!お助けをー!」

「………‥」











「トリスト、オア、トリート」
菓子くれねぇのなら俺様とデート(の約束)しろ。

「トリスト、イエット、トリート」
菓子なんざ要らねぇから俺様とデート(の約束)しろ。



お菓子の罠
2012.10.31.

THE END.


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