「ねえ、景吾。お菓子ちょうだい?」 「お菓子?」 「うん。だって今日はハロウィンでしょ?」 「成る程な。なら、ちゃんと言うべきことがあるだろうが」 「言うべきこと?」 「そうだ」 「んー…あ、分かった!えっと、お菓子くれないといたずらしちゃうよ?」 「何で日本語なんだよ」 「日本語じゃ駄目なの?」 「ああ。それじゃあ、お菓子はやれねぇな。出直して来い」 「あ、待ってよ。そ、そうだ!思い出したよ。トリック、アンド、トラップだ」 「そりゃまた随分だな。いたずらして尚且罠にはめるってか」 「あれ?違った?えっと、じゃあ、トリック、アンド、ト、トラ、トリ、トリート?」 「あーん?いたずらもするし菓子もくれだと?そもそもアンドが違うんだよ。アンドの意味を考えてみろ」 「アンドの意味?…何々と何々?」 「そうだ。だったらおかしいだろ?」 「そっか。いたずらかお菓子かって聞きたいんだから、」 「だから?」 「トリック、オア、トラップ!」 「…ったく。戻っちまってるじゃねぇか。菓子はどこいっちまったんだよ」 「菓子?…んー、じゃあ、トリック、オア、えっと、トリートだ!」 「やっとかよ。よくできました。ほらよ」 「うわーっ。こんなにいっぱい?ありがとう!」 「ふん…たいしたことねぇよ」 「食べるの楽しみだな。じゃあね、景吾」 「ああ。…って、おい。待ちやがれ」 「え?何?」 「自分だけ菓子貰ってさっさと行こうとするな」 「自分だけ?って、景吾もお菓子欲しいの?」 「トリスト、オア、トリート」 「はあ?何それ。景吾だって間違ってんじゃん」 「間違っちゃいねぇよ。俺からお前には、トリスト、オア、トリートでいいんだよ」 「えっと、お菓子あげないと…ト、ト、トリスト?」 「そうだ」 「な、何されちゃうの?…私」 「さあな」 「と、取り敢えずはお菓子をどうぞ」 「あーん?俺様が菓子なんざ欲しがると思うか」 「だって」 「なら、トリスト、イエット、トリートだな」 「えーっ。また違うの出してくるし。イ、イエ、イエ…?」 「イエットだ」 「イエット?…それって、お菓子をどうすればいいの?…お菓子を何してトリストなの?」 「返事は?」 「返事?返事がいるの?」 「ああ」 「えっとー」 「イエスかノーか」 「イエス?ノー?…じゃあ、ノーで」 「ノーだと?本当にノーでいいんだな?」 「え?…あー、やっぱ、イエス、イエス」 「イエス?ふん…イエスでいいんだな?」 「ま、待って!やっぱノーにする」 「ノーか。そうか。お前はノーを選ぶのか」 「ち、違う!違うよ、景吾。そうだよ、イ、イエスだよ」 「ほお。イエスか」 「もー、やだ。分かんないよ。そもそも単語の意味が分かんないのに答えられるわけないじゃん!」 「なら、行くぞ」 「え?行くって何処へ?」 「イエスなんだろ?だったら今からでも構わねぇよな?」 「今からでも?…いや、何かちょっと景吾怖いし…って、ちょっと待ってよ。手、引っ張んないでよ」 「ぐだぐだうるせぇよ。行くって言ったら行くんだよ」 「だから行くって何処に行くのよー!」 「………‥」 「嫌だー!景吾に拉致られるー!」 「………‥」 「神様、仏様、跡部様ー!お助けをー!」 「………‥」 「トリスト、オア、トリート」 菓子くれねぇのなら俺様とデート(の約束)しろ。 「トリスト、イエット、トリート」 菓子なんざ要らねぇから俺様とデート(の約束)しろ。 お菓子の罠 2012.10.31. THE END. |