□そのほか
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恋のHow'To Answer?(9912)












彼は間違いなく、怒っているだろう。
いつもの鋭い目が今まで以上に、怒りの視線を放っていた。
話しかけようにも、彼が出すオーラがそうさせてくれない。

なんてこった。

二人きりの控え室で、これほどの沈黙があっていいのか。
何でこんなことになったんだ。

(・・・俺のせいだよ、馬鹿。)

ふと、目を向けると。
彼は机にあるペットボトルのお茶を全て鞄につめ込み、荷物をまとめていた。
今にも部屋を出ようとする姿を見て、さすがに慌てて呼び止める。

「亮、待てよ!俺も一緒に帰る・・・って、」

振り向いた彼の視線に、言葉が出ない。
色んな感情が渦巻いているだろう彼の瞳は、俺を黙らせるには十分だった。
そのまま無言で扉を閉められ、一人残された部屋。
がっくりと肩を落とし、机に突っ伏した。






狩野が一人で悶々と悩んでいたその頃、渡辺は。






「寒い・・・!!」

駐車場に置いてある狩野の車の陰でしゃがんで固まっていた。
そう、部屋を出てきたまではよかったのだが、今日は乗せてきてもらったことをすっかり忘れていたのだ。
しかし、タクシーという選択肢もあるのに狩野を待っていたのは、別の理由もあった。

(俺は・・・狩野のこと、・・・スキなのかな)

俺はまだ2年目、狩野はもう7年目。
いくら同級生だと言っても彼は俺より長くこの世界にいるし、何より厳しさを知ってる。
狩野だって余裕なんかないはず。それなのに、後輩や投手にも優しく接してくれる。
もちろん、自分だって。

『亮!』

身体を張って、ボールを受け止めてもらったこともあった。
他愛ない悩みも聞いてもらったことがあった。
気付けば、いつも頼っていて。それでも嫌な顔ひとつせず、狩野は俺に優しく接してくれた。

それが、とても嬉しかった。

(あ、れ・・・?)

ふと浮かんだ、疑問視。
嬉しい。その想いが、行き着く先の答え。


あぁ、そっか。



「亮ッ?!」

顔を上げれば、肩で息をしている狩野の姿。
走ってきたのか、額には少し汗が浮かんでいる。

「っかの、う、」
「ずっとここにいたのか!?」
「え、あ・・・ウン。ちょっと考え事してて・・・」
「携帯に電話いれても出ないから、・・・心配した。」
「・・・ゴメン」
「とりあえず、中入って」

促されるまま、助手席に座る。
肩に置かれた手は温かくて、その温度が肌に伝わる。
まるで心を、溶かしそうな熱さ。胸が締まるような苦しさ。
暫くして狩野も運転席に座った。
エンジンが入り、暖かい風が顔に吹きかかる。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

お互い、無言。
よくよく考えれば、自分は告白された身なのに、どうしてこうよろしくお世話になってるんだ。
狩野の言葉が、頭をよぎる。


『俺、亮のこと、…好きかもしんない』


・・・好き・・・・・・かもしんない。って。
かもって何だ、かもって。
そこは、断定してくれないとちょっと・・・。


「亮?」
「・・・ぅ、え?あ、ご、ゴメン。何?」
「あのさ、・・・さっきのことなんだけど」

急激に上がる、熱。
きっと、いま自分の顔は、真っ赤に染まってる。
もちろん、耳の先まで。
狩野はそこまで言って、しばらく言葉を濁した。

こちらに向けてくる視線に、無言で頷く。

分かってる、狩野が言いたいこと。
分かってる、俺が言わなきゃいけないこと。


「狩野・・・俺、さ」
「うん?」
「ずっと・・・ずっと考えたんだ。狩野の言葉の意味」
「・・・うん」
「それと、自分のこと」
「・・・」
「俺はどうなんだろう?狩野をスキなのかな、って。でさ、考えて考えて考えてずーーっと、考えて。俺分かったんだ」

いつも、受け止めてくれる。
ぜんぶ、受け入れてくれる。
姿から、名前を呼ぶ声まで。
ぜんぶ、全部。


「俺も、狩野がスキだって」



それから暫くして、狩野から「ありがとう」という短いお礼の言葉。
抱えた膝、俺の家に向かって走る車、そして。

赤信号の間の、触れる手のひら。

それだけで、幸せ。
これが、俺が出した、彼に向けての答え。



あなたのすべてが、好きでした。






「ありがと、狩野。」
「ここが新しい家?」
「うん、」
「・・・なぁ、亮」
「なに?」

「今から、お邪魔してもいい?」



まさかの延長戦突入。
渡辺は、呆然と口を開けるしかなかった。



END
はい、両思いー・・・って展開はやすぎ!←
この続きはEROになりそ・・・^^
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