本
□YS10T06
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[痛み]
本当は一番に駆け寄りたかった。
本当は一番に抱きしめたかった。
その顔が苦痛で歪むのは、もう見たくなかったのに。
試合の結果も既に濃厚。
だからといって変わりはしない、貴方の鋭い視線。
2球目から続いた厳しい内角責め。
いずれも身体をのけぞらせていて、頭の中に過去の光景がフラッシュバックする。
そしてその瞬間は、まるでスローモーションでも見ているようだった。
でも…そう、一瞬の内の出来事。
静寂の後、後ろのスタンドで罵声が飛び交う。
転々とベンチの前に止まったボール。
右肘を押さえて膝をついている、……金本さん。
一斉にベンチ内の人という人たちが動く。
もちろん自分も金本さんの状態を確かめるべく、グラウンドに飛び出た。
一人だけはみ出して近づいていこうとしたとき、あの鋭い視線が身体の随を射ぬく。
『来るな』
言葉にしていないのに、まるで本当に言われているように感じる。
逆らえない無言の訴えを、素直に聞き入れるしかなかった。
事態は収まったものの、どうしようもなく自分の無力さに呆れ果てていた。
(俺は……)
俺は、金本さんが苦しんでるのに、何もできひんのか。
慰めることも、その傷を癒すことも。
結局、俺…は。
無力な人間でしかないんか。
END
まずはおさる視点。
次は鉢さん視点で書ければいいと思いま(・ω・)
07/05/27