本
□**いシリーズ
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否定(ひてい)
これまで何度も何度も、数え切れないほど。
否定と拒絶の言葉をうけてきた。
貴方の助けになりたかっただけなのに。
貴方に受け入れてほしかっただけなのに。
貴方の心が、ほしかっただけなのに。
「──っ金本さん!!」
駐車場に響いた声は、震えていた。
トレーニングの拠点として、もう何年も通ってるこの場所。
彼と必然的に顔を合わせることにもなるから、この際思い切って聞いてみた。
しかし、その答えは到底満足できるものではなく。
俺は背を向けた彼の元に走り出す。
革靴の乾いた音が五月蠅かったけど、それ以上に心臓の音が五月蝿いぐらいに鳴った。
「金本さん、っ」
「何じゃ、お前が聞いたことには答えたじゃろう。……離せ」
少し下の目線が、ぎろりと憤りを隠さずにこちらを見つめる。
いつもならここで引き下がるし、そもそも怒らせるところまでいきはしない。
でも、どうしても納得がいかない。
「藤本のこと引き留めたいって、嘘ですよね?」
「……」
「ねぇ金本さん。…嘘だって、言ってくださいよ」
言葉が、詰まる。
情けないことに、ちょっとでも瞼を閉じれば涙が落ちそうなところまできている。
彼はそんな僕を見ても全く動じず、むしろいつもの様に鬱陶しそうに眉をひそめていた。
「…できれば引き留めたい、と思ってるだけじゃ。結局最後に決めるのはアイツじゃけぇの」
「……」
「も、えぇか?」
どうして、
どうして、どうして。
「…いかないで」
「ッ…!!」
ポツリと呟いた言葉に、彼はひどく動揺した。
よかった、忘れてなかったんだと安堵しつつ、俺は見開いた瞳を覗き込む。
そこには不気味なほど、優しい微笑みを浮かべる自分が映っていた。
涙はもう、なかった。
「あの日、俺も同じように引き留めましたよね?行ってほしくない、そう何度も何度も数え切れないほど。」
「…」
「俺がこっちに来るときも!!来るな来るなって……金本さんはいつも、俺を否定して、存在を拒んで」
「新井、」
「俺はアイツ以上に金本さんのことを思っとるのに、俺の何がアカンと言うんじゃ!」
我に返ったときには、全て言い終えた後だった。
しかし彼はそれに対して何も言わず、再び背を向け一言、スマンと言い残し置いてある車の元に歩いていった。
もう俺は後を追わず、その後ろ姿を目に焼き付ける。
同時にひいたはずの涙が再びわいてくるのに、そう時間はかからなかった。
本当は否定されても拒絶されてもよかった。それでも貴方がいてくれれば、
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