□そのほか
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恋のHow’To Lesson(9912)









「はぁ…。」

このところ、狩野は溜息ばかり吐いている。
最近オフのテレビ番組で一緒になることが多いから、その様子をよく見てしまう。

「…幸せ逃げるよ?」
「うっせー…」

生意気な言葉を発する割には、元気はなく。
番組の控え室の机に突っ伏したまま、目だけを覗かせた。

「悩み事?」
「…まぁ、そんなとこ」
「中村さん?」
「それも、ある」

狩野がバッテリーとしてよく組んでいた中村さん。
彼はこのオフにトレードで日本ハムに行ってしまった。
数年とはいえ、相性はまぁよかったのであろう。
喧嘩するところは何度か見たが、なんだかんだで上手くいっていた。

「それもあるんだ、けど。」
「え?」

まだ続きがあることに驚き、紙コップに入ったお茶から口をはなした。
そうして言葉を待ったものの、狩野は相変わらずの状態でこちらを見つめている。

「何だよ、焦らすなって」
「あ…あのな!」
「うん。」


「俺、亮のこと、…好きかもしんない」


思考回路、停止。
意味が、理解できない。

狩野が俺のこと……スキ?


途端に、ガッと熱くなる顔。
だって今まで、そんな素振り見せなかったじゃないか。
そんな意味も込めた目で狩野を見れば、顔が赤くなっている。
心臓の鼓動が忙しない。
マウンドに上るときよりも緊張して、それに声も出なくて泣きそうになる。

上体を起こした狩野が、そっと手を伸ばす。
優しく髪に触れたあと、耳元、首にまで下がっていく。
もしかしたら、心音が聞こえてしまうんじゃないか。
余裕のないまま、かたく膨れた指が頬に触れる。
視界にはもう、狩野しか映っていない。
あまりの恥ずかしさに、咄嗟に目を閉じた。
暖かい吐息が、口唇に当たる。


『狩野さーん、渡辺さーん。出番なんでお願いしまーす!!』


激しいノック音と若い男スタッフの声に、心臓が飛び跳ねた。
吃驚して目を開けると、すぐ目の前に、狩野の顔がある。
言葉を発することも出来ず、ただ俯く。

「…行こ」

ぐいっと手首を引かれ、簡単に立ち上がらせる。
やや不機嫌な様子がうかがえたが、まさか行為が出来なかったから…?
と考えて、頭を振った。
しばらく呆然としていたが、喉が渇いていたことに気づき、飲みかけのお茶に手を伸ばす。
しかし、掴んだコップは狩野に奪われ、すべて飲み干されてしまった。

「あっ!?ちょっと、!」

抗議する間もなくそのまま番組収録に突入。


なにか飲みたい。
すっかり告白されたことを忘れ、ひたすら飲み物を口にすることだけを考えていた。




END
かのりょ。
まずは告白から……って、ナベは軽く天然はいってます^^
次から9912ラッシュ!
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