□YS0T03
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[願い言]




ゴメン、また・・・怒るかな?
再び一緒にいれへんようになった俺に、きみは。



「俺また・・・右肩痛めた」
「・・・・・・そ」
「ゴメン」
「何が?」
「傍におれんようになるから・・・だから、」

その言葉を遮るように、冷たい手が俺の頬を撫でた。
決して綺麗とは言えない凸凹した指だけど、優しさは充分伝わってくる。

「そんな、・・・そんな悲しいこと言わんといて。」
「え・・・?」
「俺なら、大丈夫やで。
どれだけ時間かかっても、浜ちゃんのこと待ち続けるから」
「・・・・・・」
「だから、安心して」

彼の顔に小さく浮かんだ微笑みは、俺にとっては我慢にしか見えなかった。
本当は泣きたいのじゃないかと。少し、自惚れて。

「・・・最後に、ぎゅっとしてエェよ」
「は・・・?」
「離れてる間も、ずっと一緒やから。セキが俺の頭の中から消えることは・・・無いから」
「・・・・・・うん」


背中合わせから、正面に。
静かなロッカールームで、男二人。



セキの涙を堪える声だけが、耳にこびりついて放れなかった。


END
07/04/24
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