□YS10T06
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[かっこいい男]




「金本さん、金本さん!」
見てくれました?と目を輝かせるサル。
1イニングで2回も福原を助ける好守備。
まぁ、確かに、すごかったけれど。
「暴投するかと思って、ヒヤヒヤしとったわ」
口にすると調子に乗るだろうから、呆れた視線を送る。
すると案の定、がっくりと肩を落とす藤本。
褒めてもらおうという気、満々やったな。
「…ま、よぅ頑張ったと思っとるよ」
するとまたキラキラと目を輝かせる。
本当に、この、…サルは。
どうしてそんな、くしゃりとした笑みを浮かべるんじゃ。
こっちのほうが嬉しくなるような微笑みを。
「金本さんのために頑張ったんですよ!」
何の恥じらいもなく言う藤本の頭を、ゴツンと殴る。
痛みに頭を抱えてるが、いつもよりは手加減しておいた…つもり。
「サル」
はい?と頭を上げた藤本の頭だけを引き寄せる。
グラウンドでは相手チームの選手が、各守備位置に走って行っている。
もう、時間はない。
今この瞬間だけ──素直になろう。


「かっこよかったぞ」


肩をぽんぽんをたたき、バッターボックスに送り出す。
未だ戸惑う藤本の後ろ姿は情けないが、ピッチャーに向ける顔つきはまた少しだけ…かっこよかった。

これで簡単に帰ってきたら、…許さんけぇの。



藤本.二塁ゴロ。


「前言撤回!!このアホ!まぬけザル!!」
「ひどっ!?てか金本さんが珍しく僕褒めるからッ、」
「うっさい!」

この二人の会話に、呆れたため息をついたベンチメンバーでした。


END
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