□混合
1ページ/7ページ

[アクシデント](BS07T01)









物事にアクシデントは付き物だ。
とは、言うけれど。
果たしてこれは物事のうちに入るのだろうか?
と、浜中は頭痛の治まらない頭で考えた。




「う・・・・・・っんー・・・。はぁ・・・」

くしゃくしゃになったシーツの上で、起きたばかりの浜中は軽く伸びをした。
冷房をいれて、しかも裸である分寒いとは思っていたけど、その主な原因は隣の恋人のようだ。
布団を一人で占領して、心地よさげに小さな寝息を立てている。

それを見て笑みを浮かべた浜中は、彼の後ろ髪にそっと手を伸ばす。
ふわふわとした柔らかさが気持ちいい、茶色の髪の毛が日光に当たって色鮮やかに輝いている。
もう暫くのんびりしたいと思ったが、今日はいつもより早めに練習へ行こうと約束していた。

寝坊なんかしたら赤星さんやもッさんに文句を言われ、鳥谷には鼻で笑われてしまう(てかアイツ、年下のくせに!)。
最初はポンポンと肩を軽く叩くが、反応なし。
今度は身体を揺すってみるが、うるさいと言わんばかりに頭まで布団を被ってしまった。
いつもならここまですると起きてくれるのに、どうして今日に限って起きてくれないんだ。

「ほんま起きろってセキ!」

痺れを切らした浜中は、勢いよく布団を剥ぐ。漸く包まっていた彼の姿が現れた。

「・・・ったく、朝から騒がしい人ですね・・・・・・。」
「・・・・・・」


あんぎゃーーーー



※しばらくお待ちください



「なっ、何でトリがここにおるねん!!」

今の状況に素っ頓狂な声を上げ、浜中は裸になっている後輩、鳥谷を指差す。
しかしそんな言葉を馬鹿にするかのように言い放った。

「ここ、僕の部屋ですから」

一言呟いた鳥谷は、固まる浜中を冷たい視線で見つめ洗面所へと消えた。
呆然と固まっていたが、事態をしっかり確認するためにも昨晩のことを思い出そうと必死になっていた。

「ちょ・・・・・・まてよ・・・」

昨日の夜。
いつものメンバー(赤星さん・もッさん・セキ・トリ)で、ウノをした(セキが持ってきてた)。
あぁ、確かにあの時トリの部屋やったなぁ・・・と、今頃思い出す。
んで、金本さんが来て「差し入れや」と言って焼酎(魔王)を置いていった。

とりあえずもらったから飲もうということになった、が、普段飲まないセキは一発ダウン。
一番最初に部屋に帰ってった(・・・そうや帰ったやん!!バイバーイって手振ってたやん俺!!)
それからしばらくしてお開きになったけど、相当飲んでしまった俺は自分で帰れんようになった。

で?・・・・・・で??


『セキー、イイことしよっかぁ。』
『ちょっ、アンタなに言ってんですか!!』


全てを思い出した浜中は頭を抱え真っ青になっていた。
そうだ、今考えれば標準語に少し違和感を抱いた覚えはあったのだ。
けど、アルコールにながされて・・・。

「思い出しましたか?」
顔をあげると、タオルを片手に鳥谷が出てきた。
いつもよりふてぶてしい様子に、自分のせいだ。と頭を擡げた。

「全く、どういうつもりなんですかね」
はぁ、と溜め息をついた鳥谷の首筋には、たくさんの赤い痕が残っていた。
どうにも居た堪れない気持ちになり素直に、ゴメン。と一言謝る。
「別に終わってしまった事は仕方ないです」
淡々と答える鳥谷は、俺の顔を見ようとしなかった。
それもそうやんな・・・、間違えて襲われるわけやねんから。

「鍵、ちゃんとフロントに返しといてくださいね」
先に練習行きます、と既に着替えを終えた鳥谷が上から見下ろして言った。
無言で頷きじっと動かなかったが、動かない彼に顔をあげると、頬を赤く染め困ったような顔をしている。

「・・・?トリ、」
「ごめんなさい」
「え?」
鳥谷の謝罪の言葉に首を傾げる。
「背中、しばらく痛むかもしれませんけど・・・」
と、意味深げな言葉を残して鳥谷は部屋から出て行った。
しん、と静まり返っている部屋で、浜中は鳥谷の言葉の意味を確認すべく洗面所へと向かう。
「あ、・・・──っ?!」
くるりと鏡に背を向けた瞬間、驚きで声が出なかった。
そこには幾つもの引っ掻き傷が残っていたのだ。
赤く色付く背中は、急に痛みを伴いだす。

「・・・は、あはは・・・。」
だけどそれよりもまず浜中の顔に浮かんだのは苦痛の表情ではなく、先程の鳥谷のように困り果てた笑みだった。
じわり、と痛むはずの背中は、なぜか和らぐほどの暖かさを保っていて。

「トリって意外と、可愛いですよね」
室内練習場でノックを受ける鳥谷を見て、浜中は呟いた。
それをしゃがんで見ていた藤本は、驚きの表情を見せる。

「どしたんハマ、急に?」
「いや、可愛らしいとこあるんやなーって思って」
ノックを終えた鳥谷は、先に座っていた関本の横に座った。
浜中の視線には気付かず、楽しそうに会話をしている。
その様子をじぃっと見ていた藤本は呆れたように溜め息をつき、

「昨日飲み過ぎで頭おかしくなったんとちゃうか?」
と言って、さっさとノックを受けに行った。


先輩からの思わぬ答えに、浜中は苦笑いを浮かべるしかなかった。
それを鳥谷が見ていた、なんて気付くはずもなく。


END
初はまとり。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ