□**いシリーズ
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終い(しまい)









また、一年が終わった。
正確に言えば、7ヶ月と少し。

今年もチームに貢献ができなかった。
オフにどれだけ助言をもらっても、どれだけ体を追い込もうとも結果がついてこない。

生え抜きとはいえ、成績を残さない選手なんて、……クビ。
甘え、人情なんて通用しない。
過去に貢献したからといって、だから何だって言うんだ。
そんな人たちがいろんな形で去っていったのを、今までどれだけ目に焼き付けてきたか。
惜しまれながら引退したひと、志半ば辞めざるをえなかった先輩後輩。

そんなこと、まだまだずっと先の話だと思っていた。
まだ中堅の位置にいるし、今は控えであれど、巻き返すチャンスはある、と。
でも、違う。
俺は今、一歩ずつ。でも、確実に。
居場所がなくなってきている。










「サル。」

呼びかけに、はっ、と我に返ると鋭い視線がこちらを睨みつけていた。
やばい、食事中だった。と頭を掻く。

「すいません」
「…で、どうするんじゃお前」
「え?」
「……残留か、行使か」

冷酒の中の氷が、タイミングよくパキンとひび割れる。
まるで心を読まれているようだ。


「……まだ、考え中ですよ」


俺は困ったように笑う。
今、人生の分れ道に立たされているこの身。





選手として活躍することが最高の喜びのはずだったのに、俺はいつの間にかあなたの傍にいることが最大の幸せになっていた。




だけど、それはもう今年でおいになるのかもしれない。




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