短編小説

□矛盾の空を見上げて(SPEC、5話ラスト脳内補完)
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あいつは、屋上で夜明け前の空を見ていた。
穏やかな気持ちにでもなりたかったんだろうか……にしては、どこか寂しげな背中。
あーもー似合わない、その背中を踏んでやろうか。背中を踏むから背踏み、せぶみ、瀬文……なんちて。
そっと近づいて、そして、少し距離をおいて座った。

「当麻」

振り向きもせずに難なく名前を呼ばれる。そういえば、反発し合いながらも溶け合えていたような気がする。
まだ出会って日も浅いのに。
まだ、出会って、日も浅いのに。

はい、となるべく平静を装って返す。


「死は、常にそこにある」

背を向けたまま言葉が紡がれていく。淡々と、けれども何処か押し殺すように。
…あぁ、彼はここに決意表明をしに来たのか。
快晴ではなく、白みはじめた空の下。声高ではなく、呟くような声で。それは二人しかいないグラウンドで行われた選手宣誓。
ちら、と彼を見る。少し距離がある。

(まだ全てを話すことは出来ないけど…)

「私情は禁物です」
忠告ならできる。
「でも…」
心のままに、半ば無意識に口が動く。
「はい」
矛盾してることくらい分かってる。でもこれが、正直な気持ち。

ならば。



二人で、同じ空を見上げた。
青とオレンジの夜明け。
矛盾を抱えた夜明け。

何かが始まる、夜明け。

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