短編小説2
□April fall(TRICK)
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4月1日が嘘をつく日だと知ったのはけっこう最近のことだった。
そして今年も例に漏れず上田がやってきた。嘘をつくためだ。
コンビニ弁当を食べて、お茶っ葉にケチをつけられて、私がペットの相手を始めて、上田さんがわらび餅を取り出して食べる。
怖いくらい静かに時間が流れた。
上田さんがコトリと湯呑みを置く。私はペットの相手も飽きてぼけーっとする。
「……す、好きだ」
大体予想できてたから、なんだかもう驚きとかはなくて。
「…卑怯者」
とだけ返して卓袱台につっぷした。
「明日…」
それから少し経って、頭に手を置かれた感覚。
「…明日、同じことを言いに来よう」
ドアがバタンと閉まる音。私はガバッと顔をあげた。
「え?…えっ?」
展開が私の予想を急に踏み外してきて、さっきまでの冷静な私はどこへやらだ。
「…早いけど、今日はもう寝ちゃおっかなー……えへへ!」
誰にともなくそう呟いて、奈緒子は幸せそうに眠りについた。
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タイトルは4月に落ちるとでも訳しておいてください。(正確な英語じゃありません)