短編小説
□じえんど(TRICK)
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いつかの昔、あの島ではないどこかの洞窟で、全てを終わらせるために蓋を開けたあの日を思い出した。
小刻みに震える手はもう自分の力じゃ止められないけれど…できるはずだ、もう一度。
ぎゅっと柄を握り直した。
ろくに料理も作らないこの部屋にだってこれくらいはある。あとはそう、もう一度あの日の気持ちに。動作は少し違うけど、もう少し力を入れて自分の方向に。
どこかで「やめろ!」と叫ぶ声がするのは幻聴。
あの時はそれを振り払って死を選べた。
なのに今は
いくら言い聞かせてみてもキラキラ光る銀色は動かない。
あの日よりも更に鮮明に、あいつとの未来を描けてしまうから。
だとしたらこれは弱さなんだろうか。
そんなの…要りません。
無理矢理大きく息を吸って呼吸を整えた。
さぁ!今終わらせてしまえ、こんな呪われた血など!!
コンコン
と、ふいに近くでノックが聞こえて。
驚いた拍子に力が抜けて、足元でカシャリと音がした。