短編小説

□帰路(TRICK)
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疲れているのかいつもの寝言は聞こえない。ぼんやり光る赤いランプをみつめながら、隣で規則正しい呼吸音を聞く。

あの通りを右に曲がれば彼女のアパート。
…間違えて、間違えて左に曲がれば。ついこいつが乗ってることを忘れてしまって、左に曲がれば……俺のマンション。彼女は寝ている。
青いランプがGOサインを出して、分かれ道が近づいてくる。運命の分かれ道。ウインカーを出す手が迷っている。ああ俺はどうすれば
















いつもの高架下で盛大なため息をついた。結局俺はこうなのか。車内に入り込んできた夜風に頬をはたかれた気がした。
助手が寝返りをうつ。月明かりに照らされて、あぁ正面から見たら綺麗だろうな、と思った。この気持ちをうまく伝えられればもっといいと思った。



さて、ここからどうするか。
彼女を起こさずにUターンして、運命などねじ曲げてしまおうか。


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※奈緒子起きてます。

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