短編小説

□不完全燃焼(TRICK)
1ページ/1ページ

食べ物相手に向けられた笑顔でも眩しく思えたのは3ヶ月ぶりだから。相変わらずな食べっぷりをじっと見つめる。

頼むからそのままこっちをむいてくれ、と唱えれば一瞬目が合ってすぐ逸らされて

宙をさ迷わせていた肉を急いで放り込んだ。


ああもう不完全燃焼なんだよ!お互いもう限界なんだろ?だったら早く認めてしまえ。そしたらもっと楽に呼吸ができるのに。

「もうお腹いっぱいです」と山田が言った。こちらだって当の昔に満腹だ。
店に入ってからかれこれ一時間半、…トータルで考えると、二時間。ならもう少しくらい…

ゆっくりとした動作でメニューを広げて他愛の無い会話を探す。
せめて、この燻りがどうにかなるまで。
メニューを少しずらしたらやっぱり目が合ってすぐ逸らされて「まだ決まらないのか」と言われた。

…完全に不完全燃焼だ。君もなんだろ?そうなんだろ?
いつまでたっても不完全燃焼なんだ、不完全燃焼なんだよ、ただ側に居るだけじゃあ。


――――――――――――――
石川智晶さんの「不完全燃焼」が上山に聴こえてしまったんで殴り書き。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ