短編小説
□小さい春みつけた(TRICK)
1ページ/1ページ
さっきからぼーっとこちらに向いてる、その視線の中にひとつ。
散り始めてもいない桜の下で"花びらがついてる"と髪に触れてきた、その掌の中にひとつ。
花見の季節なのに、焼肉じゃなくてすき焼きを誘う、その言葉の中にひとつ。
つまずいた拍子に倒れ込んでしまった上田さんの胸、その鼓動のあまりの大きさの中にひとつ。
急いで離れて少し速足で歩く。それだけのことなのに熱を訴える、この体温の中に…ひとつ。
小さい春
小さい春
小さい春、みつけた
――――――――――――――
もう好きなだけいちゃついてれば良いよ!!