短編小説

□鎖(TRICK)
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上田さんと出逢って、いろんなところへ行った。
ことあるごとにケンカしたし、罵りあったりもした。

好き勝手に連れ回して、放っておかれるのはいつものことで、足取りが遅れれば置いていかれて、でも私が道に迷った時は、名前も知らない島まで来て…






「鎖、を付けてやる」
そして今は、
「くさり?」
やけに真剣な表情であたしの手を取っている。
「もう何処へも行かないようにだ」
震える指でつまんでいるのは上田さん曰く年収三ヶ月分…って緊張し過ぎだろ。意味は一応通じるけど。

薬指に可愛らしい鎖がはめられて、私は苦手だったはずの表情を浮かべる。
この鎖なら自分をここに繋ぎ止めてくれる気がした。

「エヘヘヘ!」


ああもう上田さん、そっちは右手ですって
                                    

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