短編小説

□雨のち雨(TRICK)
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今度こそは本当にそうなると、覚悟を決めて来た南の島。独特の暑さを持った不快な風がまとわりつく。

見上げた空は能天気なほど青くて――



あついな。汗もかいてきた。頼る相手もいないし。
だから、余計な水分を消費してる場合じゃないのに。
覚悟を決めて、来た筈なのに。


砂浜に崩れ落ちて、震える肩を抱きしめた。必死でこれが正解だと言い聞かせる。
きっと“人のように”なんて無理な話だったんだ。それが、あいつと出逢ったせいで遠回りして、回り道をして。
…それでも、逃れられないこの道にたどり着いた。

雨足が強まり地面を濡らす。いつの間にか雲も蔭って――



……いや違う。よく見ると自分の影だけが大きくなっている。
夢中でうしろを振り向いた。

「      」

諦めていた。そのくせ、待ち焦がれていた声。頭がぐちゃぐちゃで何を言われたかはよくわからない。ただ、ひどく優しい音色だった気がする。

「かえろう」と腕を掴まれて、また雨が降りはじめた。

あとどれくらい救い上げて貰えるのだろう。この声に、この手に。

そっと後ろを振りかえる。
さっき零れた雨粒はもう消えていた。
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鬼束さんのMAGICALWORLD聞きながら作成。でもなんかいつも同じような話書いてる気がする´p`                           

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