短編小説

□似て非なるもの(TRICK)
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まるで同じビデオを繰り返しているみたいに。最期に残していく言葉はどれも、信じたくない嘘。



でもその嘘は、私を嘲笑うように積み重なって。

「おい、帰るぞ」
「……」
こんな薄っぺらい重みにすら負けそうになる。
「YOU?」
「上田さんは、あたしと一緒にいない方がいいんです」
「……バーカ」
思いきって告げた言葉は、あっさり否定された。半ばヤケになっていた私は反論する。
「だって、わたしはっ…!!、霊能「いい加減にしないか!!」」
一瞬その声量に驚くも、すぐさま上田を睨んだ。
だが次に上田が発したのは、何とも幼稚な言い訳だった。
「君みたいな意地汚い貧乳が、そんなすごい人間な訳ないだろう」
内容に少々拍子抜けしながらも、高ぶっていた感情が落ち着いてくる気がした。
「俺はYOUじゃないし、YOUは俺じゃない。…俺はYOUのお父さんでもないし、当たり前だがYOUはYOUのお母さんじゃあない」
「あ……」
紛れもない、意外と簡単な場所にあった事実。その確かな心地に、胸の中で小さな何かが消えるのを感じる。

「だから、大丈夫だ」

凄いな、と正直に思う。
幼稚な言い訳を、堂々と振りかざして否定してくる強さがそこにはあった。

(…要は自分勝手なだけじゃん!!)

なんだかもう、あれこれ難しく考えていた自分がおかしく思えてくる。

「ところでさっきの。何が大丈夫なんだ?」
「え。いやその…、なんだ」

「……バーカ」

(ありがとうございます、もう大丈夫です)

特に何も考えず、私は楽しげに悪態をついた。

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