短編小説

□素直に(TRICK)
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せめて、どちらかに偏ってくれればまだマシだと思った。
ひどく曖昧な関係。

もう、どれくらい会っていないのだろう…





部屋の窓から夜空を眺めてかれこれ30分。流れ星はいまだにゼロ。
まるで祈ることすら許されないみたいに。

じわり、と涙が込み上げてきた。だからこぼれないように滲んだ天井を見上げた。
何を祈るの、とか、なんで泣くの、とかきかれたって、きっと意地っ張りな私は言葉にしないんだろう。
素直に泣けない弱い心なんていらない。でも、何があっても泣かない強さを欲しいとも思わない。
きっと今欲しいのは、心のままに泣ける自分とそんな自分にしてくれる場所。その場所を思い描こうとしたら、一筋溢れた涙がこぼれた。
瞼の裏で、あいつがバカみたいに優しく笑っていた。






「………YOU?」

夢のようなささやき。
驚いて目をあけると、滲んだ天井の代わりに滲んだ上田が映った。

「泣いてるのか」

どうして、約束なんてしてないのに、電話すらなかったのに。
どうして、よりにもよって泣いてる時に、会いたいと思った時に。
どうして、他の誰でもないこいつが。
「どうして…っ」
「ど、どうしてって…ここ最近忙しかったんだがようやくゆっくりできて、ふと…い、いや!ほんの一瞬だが君のことを思い出して。それで…メシを………なんで泣いてんだ」
巨体をオロオロさせながら手にはコンビニの袋。出てきた言葉はしどろもどろで意地っ張り。

それでも、心が一気に温かくなるのを感じた。うまく回らないあたまが、流れ星を見つけられなくても会えたな、とか訳のわからないことを考えている。

「べつに…、私はお前と違って、お前のことはこれっぽっちも思い出したことなんてありません」

まだ口は可愛いことが言えないけど――

祈るように、彼を見た。
そしていつか素直になれるように、心の中だけでそっと続きを付け足す。









思い出したことなんてないのは…、ね

忘れた時が一度もないからです







――――――――――――――初TRICK小説が完全オリジナルじゃない件/(^O^)\
わかる人にはわかると思いますが、文章の所々に浜崎あゆみの"HANABI"の歌詞(および歌詞に近い描写)が入ってます(笑)←コラ!

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