短編集

無能な僕、強がる君
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初めて名前と出会ったのは、一年の教室。
たまたま同じクラスで隣同士になったけど、その時は別に名前に興味はなかった。



だけど、俺が数学の宿題を忘れて焦ってた時



『……切原君…もしかして宿題忘れてたんですか?』

「うっ…。し、しかたねーだろ部活で疲れてソッコー寝ちまったんだから!」

『…ふふっ…子供みたいな言い訳ですね?あ…よかったら私の見ますか?数学、得意なんです』



そう言って名前は、笑いながら俺にノートを差し出してきたんだ。
その時の名前の笑顔が、俺には輝いて見えた。

同い年なのに敬語で話す、他の奴とは少し雰囲気の違う変な奴。
当初抱いていたその印象が見事打ち砕かれ、その時から俺は名前に、笑顔の可愛い気になる女、という印象を持った。




それから半ば無理矢理名前をマネージャーに推し、同じテニス部で行動を共にした。
名前は働き者で気が利いて、部員達と打ち解けていくのにそう時間はかからなかった。

勿論俺も例外じゃなく、名前と一緒にいるうちに、気になる女から好きな女へと気持ちは自然に変わっていった。

本当に好きだった。
溢れる気持ちが抑えられなくなった。

だから一年の終わり、終業式に告白した。



結果はOKだった。
私も好きです、と顔を真っ赤にして言ってくれた名前がすげえ愛しくて可愛くて…
思わず俺は名前を抱きしめてキスをした。

キスした時、名前はこれでもかって驚いてたけど…恥ずかしそうに笑ってくれた。


それが凄く嬉しくて、幸せで…
この笑顔を絶対守っていこうって、心に誓った。
…………誓った…はず、なのに……



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