短編集

ごめんねの言葉
2ページ/3ページ




『うらぁ!』



なかなかイライラが消えない私は、家出も兼ねて、夜の領域でモンスターを狩りながらアイテムを採取していた。

モンスター狩りはストレス解消になるし、アイテムは売ってお金に出来る。

おまけに頭も冷やせるから、一人になりたい時にちょうどいい。

夜の領域は殆ど人が踏み入らないから、邪魔をされることもない。



『ふぃー…あらかた片付いたかな…』



ふと気がつけば、周りにはモンスターがいなくなっていた。
…まぁずっと狩ってたから、当たり前か。



『……そろそろ帰ろうかな…』



やっと頭が冷えた今、ここにいる意味はなくなった。

よし、帰ろう。
そう思って歩きだそうとした時。



『………っ!?』



大きな雄叫びと共に、そのモンスターは現れた。

あの姿は…ブラッドエイク!?



『…うっそ……!』



連続で狩りをしたから体力が残ってないし、回復アイテムも無い。
こんな状況でブラッドエイクに勝つのは不可能。
かといって、逃げ出せるかと言われれば、答えはNO。



『やるしか…ないか…!』



どっちにしろ死ぬなら、僅かでも生き残る可能性のある方に賭けたい。



『来なよ…相手してやる!』



武器を突き付けると、向こうも戦闘体勢に入った。

…そして…!



『…っ!!』



突如、ブラッドエイクが体ごとこっちに突っ込んできた。
それを間一髪でかわす。
けれど、ブラッドエイクの爪が私の肩をギリギリでえぐっていた。



『いっ…つぅ……!』



肩から血が溢れ、激痛が走る。
思わずその場にしゃがみ込むと、その頭上をブラッドエイクが通過していった。

また突っ込んできたのを、偶然かわしてしまったらしい。
けれど、多分、次で仕留められる。














ああ、私はここで死ぬんだ。
ステルクと喧嘩したまま。

私が死んだら、ステルクは悲しんでくれるかな?
それとも…喜ぶかな。



…どうせなら、悲しんでほしいなぁ…






『…ステルク……』





後ろを振り向くと、ブラッドエイクがこちらに向かってきていて





『……ごめんね…。…それから…』





私の真後ろまで近づくと





『…幸せを、ありがとう』





その爪で、私の体を貫いた。







ごめんねの言葉







「ナマエーーー!!!」



意識を無くす瞬間、愛しい彼の声が聞こえた気がした。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ