短編集
□ごめんねの言葉
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『うらぁ!』
なかなかイライラが消えない私は、家出も兼ねて、夜の領域でモンスターを狩りながらアイテムを採取していた。
モンスター狩りはストレス解消になるし、アイテムは売ってお金に出来る。
おまけに頭も冷やせるから、一人になりたい時にちょうどいい。
夜の領域は殆ど人が踏み入らないから、邪魔をされることもない。
『ふぃー…あらかた片付いたかな…』
ふと気がつけば、周りにはモンスターがいなくなっていた。
…まぁずっと狩ってたから、当たり前か。
『……そろそろ帰ろうかな…』
やっと頭が冷えた今、ここにいる意味はなくなった。
よし、帰ろう。
そう思って歩きだそうとした時。
『………っ!?』
大きな雄叫びと共に、そのモンスターは現れた。
あの姿は…ブラッドエイク!?
『…うっそ……!』
連続で狩りをしたから体力が残ってないし、回復アイテムも無い。
こんな状況でブラッドエイクに勝つのは不可能。
かといって、逃げ出せるかと言われれば、答えはNO。
『やるしか…ないか…!』
どっちにしろ死ぬなら、僅かでも生き残る可能性のある方に賭けたい。
『来なよ…相手してやる!』
武器を突き付けると、向こうも戦闘体勢に入った。
…そして…!
『…っ!!』
突如、ブラッドエイクが体ごとこっちに突っ込んできた。
それを間一髪でかわす。
けれど、ブラッドエイクの爪が私の肩をギリギリでえぐっていた。
『いっ…つぅ……!』
肩から血が溢れ、激痛が走る。
思わずその場にしゃがみ込むと、その頭上をブラッドエイクが通過していった。
また突っ込んできたのを、偶然かわしてしまったらしい。
けれど、多分、次で仕留められる。
ああ、私はここで死ぬんだ。
ステルクと喧嘩したまま。
私が死んだら、ステルクは悲しんでくれるかな?
それとも…喜ぶかな。
…どうせなら、悲しんでほしいなぁ…
『…ステルク……』
後ろを振り向くと、ブラッドエイクがこちらに向かってきていて
『……ごめんね…。…それから…』
私の真後ろまで近づくと
『…幸せを、ありがとう』
その爪で、私の体を貫いた。
ごめんねの言葉
「ナマエーーー!!!」
意識を無くす瞬間、愛しい彼の声が聞こえた気がした。