短編集

空の向こう
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それは、久遠監督から突然知らされた報告だった



「名字が…亡くなった」



理解出来ない
名前ちゃんが死んだ?

なんで?どうして?


昨日までマネージャーとして僕達のサポートをしてくれていたのに

さっきだって、用事が終わったから今から向かうって僕に連絡があったのに

なのに…どうして死んだなんて監督は…



「ど…いう、ことですか…?」

「言葉通りだ円堂。ここに向かう途中、名字は交通事故に巻き込まれた。…即死だったそうだ」



名前ちゃんが…事故…?
即死…?



「そんな……名前が…」

「………だ」

「吹雪…?」

「…嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ!嘘だぁぁぁ!!」



名前ちゃんが死ぬはずない!

だって名前ちゃんは僕達と世界へ行くって言ったんだ!

それなのに…それなのに…!



「落ち着け吹雪!…名字は…名字は死んだんだ!死んだ人間は、もう戻ってはこない!」

「っ!!」

「お前が取り乱すのも分かる。俺達にとっても、名字は大事な仲間だ。…だけど、俺達はあいつの死を受け止めないといけない。そうしないと、いつまでたっても、名字が安心して眠れないだろう…!」

「…豪炎寺…君……」



皆、涙を流しながら俯いている

きっと、皆も本当は認めたくないんだ…


…それでも、僕は…



「…僕は…それでも、受け入れられない…。名前ちゃん無しじゃ…もう…!」



いつの間にか、名前ちゃんの存在が僕の中で大きくなった

一緒にいるとドキドキした
名前ちゃんの笑顔を見ると癒された
名前ちゃんと喧嘩したら悲しかった
名前ちゃんが悲しんでたら苦しかった

そう、僕は名前ちゃんが好きなんだ


だから、FFIが終わったら…告白しようって…
告白…するつもりだったのに…



「僕は…まだ名前ちゃんに…気持ちを言ってない…言ってないのに…」

「吹雪……。……あのな、吹雪。名前も、お前が好きだったんだ」

「え…?」



今、風丸君は名前ちゃんが僕を好きだって…
そう、言った…?



「あいつ、よく俺に相談してきてたんだ。で、やっと決心が付いたって夕べ言ってた。…今日、吹雪に告白するつもりだったんだよ、名前は」

「……っ!」



名前ちゃんは、僕が好きだった
それは凄く嬉しい

嬉しいのに…
涙が、止まらない…!



「吹雪…お前達は同じ気持ちだったんだ。だから…あいつの分まで、お前は幸せになるんだ」

「名前ちゃんの、分まで…?」

「そう、名前の分まで。名前の望みはFFI優勝だ。だからまずは、俺達が優勝することから始めるんだ。その先は、お前が幸せだと感じるような生き方をすればいい。そうすれば…名前はいつもみたいに、笑って見守ってくれるさ」

「…風丸、君……!」

「風丸の言う通りだ。俺達が今しなくちゃならないのは、名前の死を嘆くことじゃない。名前だって、きっとそんなこと望んでない。だから俺達は、名前の分まで頑張るんだ!」



キャプテンの言葉に、皆顔を上げて頷く

まだ涙を流しているけど、さっきまでの表情じゃない





名前ちゃん
君は、もう僕の前に現れてはくれない

もう、僕の名前を呼んでくれない


それでも
僕はずっと君のことを想う

僕は、君に恥じないような生き方をするよ





だから…



空の向こう





アツヤと一緒に、僕達を応援してて

そして、来世で今度こそ結ばれよう


.

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