短編集
□ゴーグル越しの君
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『鬼道さーん』
「なんだ?」
『ゴーグル取って下さい』
「断る」
『なんでですかー!』
休み時間、俺の教室に押しかけてきた名字
そしていきなり
ゴーグルを取れ、と言う
なんなんだコイツは
意図が全くわからない
「逆に聞くが、何故取ってほしいんだ?」
『鬼道さんの目が見たいです』
「それなら取らなくても見えるだろう」
『嫌です生で見たいです取って下さいー!』
「だが断る」
『けち!おにみちのけち!』
「[おにみち]じゃない![きどう]だ!」
『おーにおーにおーにっみち!』
「…………………」
ムニッ ギュウウ
『いひゃあぁ!ほっへふへらないれくらはい!』
「自業自得だ」
生意気な名字の頬をグニグニと弄ぶ
…意外と柔らかいことが発覚した
『うひぃ…顔が痛い…』
「お前が悪いんだろう」
『んぶー!どーして取ってくれないんですか!理由言って下さい理由!』
「…理由、そんなに知りたいのか?」
『はい、知りたいです!』
「ならば教えてやろう」
俺は名字の耳元に顔を近づけ、名字だけに聞こえるように囁いた
その直後、名字は林檎のように真っ赤になって固まった
口をパクパクさせて…魚か、お前は
『き、鬼道さん…』
「…なんだ」
『……やっぱり私、鬼道さんが好きです!』
「ああ、知っている」
“ゴーグルを付けていないと、お前を直視出来ないからだ“
直視出来ないのは
彼女が可愛すぎるから
ゴーグル越しの君