短編集

ゴーグル越しの君
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『鬼道さーん』

「なんだ?」

『ゴーグル取って下さい』

「断る」

『なんでですかー!』



休み時間、俺の教室に押しかけてきた名字

そしていきなり
ゴーグルを取れ、と言う

なんなんだコイツは
意図が全くわからない



「逆に聞くが、何故取ってほしいんだ?」

『鬼道さんの目が見たいです』

「それなら取らなくても見えるだろう」

『嫌です生で見たいです取って下さいー!』

「だが断る」

『けち!おにみちのけち!』

「[おにみち]じゃない![きどう]だ!」

『おーにおーにおーにっみち!』

「…………………」


ムニッ ギュウウ


『いひゃあぁ!ほっへふへらないれくらはい!』

「自業自得だ」



生意気な名字の頬をグニグニと弄ぶ
…意外と柔らかいことが発覚した



『うひぃ…顔が痛い…』

「お前が悪いんだろう」

『んぶー!どーして取ってくれないんですか!理由言って下さい理由!』

「…理由、そんなに知りたいのか?」

『はい、知りたいです!』

「ならば教えてやろう」



俺は名字の耳元に顔を近づけ、名字だけに聞こえるように囁いた

その直後、名字は林檎のように真っ赤になって固まった

口をパクパクさせて…魚か、お前は



『き、鬼道さん…』

「…なんだ」

『……やっぱり私、鬼道さんが好きです!』

「ああ、知っている」












“ゴーグルを付けていないと、お前を直視出来ないからだ“


直視出来ないのは
彼女が可愛すぎるから







ゴーグル越しの君
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