小説2

□祥平編
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秋の冷たい風が吹く中、俺は愛華に
頼まれて健二と二人で買い物に来ていた。

「よし、ここで最後だったからもう終わりだな」
「んじゃ、帰るか」

そう言って俺と健二は家に向かって歩き始めた。
歩き始めて直ぐにコツン、と足に何かが当たった。
何かと思って足元を見ると、それは野球ボール
だった。ボールを拾い上げた時、近くの公園から声がした。

「おーい!取ってくれてありがとう!それ僕の!!」

声のする方を見ると、男の子二人が仲良く
駆け寄って来た。多分、兄弟だろう。

「拾ってくれてありがとうございます」

兄らしき少年がそう言って俺にお辞儀してきた。
それを見た弟もペコッ、と頭を下げた。

「どういたしまして。道路に出さないように気を付けろな」

じゃあ、と笑顔で言って俺はボールを渡し、健二
とまた歩き始めた。
歩いてから直ぐに健二が

「キャッチボールかぁ〜、最近やってねぇな...。
なぁ!帰ったらやろうぜ!!」
「いいね。やるか、久々に!」
俺がそう言うと、健二も俺も笑顔になった。

家に着いた俺たちは、台所にいる愛華に頼まれた物を
わたすと、急いで庭に向かった。
向かっている途中で俺は、さっきの兄弟を思い出してた。
「兄ちゃん、か...」
「ん?何か言ったか?」
心の中で言った筈が、声に出ていたらしい。
俺は、何も、と急いで返事をした。
庭に着いた俺らは、グローブをはめながら
丁度いい距離まで離れた。
グローブを見ると、思い出す。

『兄貴...』
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