短編集
□君が最初
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§君が最初
僕は何にも持ってなかった。お金も夢も友達も。まして、恋人なんかいない。いてはいけない。
僕は生きてちゃいけない。
でも僕には死ぬ理由がない。
死ぬのは怖い。
だから僕は逃げる。
(僕は獣なんかじゃない!)
(僕は君を傷つけたくない!)
届かない叫び声をあげながら。
(僕は人狼)
(僕には人が殺せる)
二律背反の思いを抱いて。
(ボクハ、ボクハ………)
「 ダ
レ
カ
キ
ヅ
イ
テ 」
*
「……へぇ!人狼?」
「あぁ。僕は人殺しだってできる。」
「できないくせに。」
「やらないだけさ。」
「でもワクワクするわね。」
「……え?わ、わくわく?」
普通とは何か違かった。
彼女は違かった。
全てを楽しんで、全てを受け入れてくれた。
「そうよ!」
「ど、どこら辺がだい?」
「全部よ!」
「ぜ、全部?」
「だって、変身できるなんて素敵じゃない?ハロウィンなんか倍楽しくなるわ!」
「りち……君って、」
「変わってるねは褒め言葉よ?」
「…じゃあ、まともだね。」
「それはそれは。」
そんな君に、少しずつ惹かれていったんだ。
君が最初
ねぇ、この気持ちは何?
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