短編集

□君が最初
1ページ/1ページ





§君が最初







僕は何にも持ってなかった。お金も夢も友達も。まして、恋人なんかいない。いてはいけない。


僕は生きてちゃいけない。

でも僕には死ぬ理由がない。



死ぬのは怖い。


だから僕は逃げる。



(僕は獣なんかじゃない!)



(僕は君を傷つけたくない!)



届かない叫び声をあげながら。



(僕は人狼)




(僕には人が殺せる)




二律背反の思いを抱いて。



(ボクハ、ボクハ………)




「 ダ 
  レ
   カ
     キ 
   ヅ
       イ
         テ  」




*



「……へぇ!人狼?」



「あぁ。僕は人殺しだってできる。」



「できないくせに。」



「やらないだけさ。」



「でもワクワクするわね。」



「……え?わ、わくわく?」



普通とは何か違かった。

彼女は違かった。

全てを楽しんで、全てを受け入れてくれた。



「そうよ!」



「ど、どこら辺がだい?」



「全部よ!」



「ぜ、全部?」



「だって、変身できるなんて素敵じゃない?ハロウィンなんか倍楽しくなるわ!」



「りち……君って、」


「変わってるねは褒め言葉よ?」



「…じゃあ、まともだね。」



「それはそれは。」




そんな君に、少しずつ惹かれていったんだ。


君が最初


ねぇ、この気持ちは何?





_

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ