Novel
□聲
1ページ/2ページ
肉の切り裂ける音。
骨の砕ける音。
血飛沫が飛び散る音。
赤黒い屍達の、悲鳴。
耳を塞ぎたくなる音ばかりだ。
いっそこのまま、動乱に紛れて
死んでしまいたいとさえ思った。
(きこえない、ききたくない)
何の為に自分が此処に来たのか、
全く解らなくなりそうだ。
否、最初から解らなかったけれど。
目を瞑って、
ただ切り捨てていけばいいのだろうか。
目を瞑ったって、
(悲鳴は聞こえるというのに)
自分の耳に聞こえたのは、
それらの悲鳴だけではなかった。
容を変えて、軋むこころの音。
耳を澄ましても聞こえないような、
小さく、弱い悲鳴。
(必ず護ると、決めたはずだった)