Novel

□例えば、斬ると云う事。
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記憶がふと、脳を巡った。

月を、眺めていた。
当然の如く空は闇に包まれていて、
たがそれは当然では無いかの様に、
高杉の白い肌を浮かび上がらせていた。
ただ純粋に、綺麗だと思った。

(いつからだっけ、)
(高杉がこんな風になったのは。)

「高杉」
小さく名を呼ぶと、それが振り返って、
口元が弧を描く。
「どうした、情けねェ声出しやがって」
クク、と喉を鳴らして笑う。
決して楽しげではない狂ったような笑い。
「…寒くねぇのかよ」
「別に。慣れちまったからなァ」
そう呟く高杉の横顔がやけに果敢なくて、
今にも消えてしまいそうで怖かった。

そうだった。
自分は、高杉が怖かった。
(だって消えてしまいそうだから)
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